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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《平成25年4月号》
子の出生予定者への異動命令
  質 問

【質問者】
 販売業(正社員40 名)

【質問内容】
 当社は、住宅建材を中心とする建設資材販売業で、従業員数は正社員40 名です。福岡本社の他、長崎、熊本、大分、鹿児島に営業所があります。正社員のうち約半数は本店に勤務し、各営業所にはそれぞれ4 〜 5 人が在籍しています。
 当社の事務職は、すべて現地採用で異動がありませんが、営業職は本社及び各営業所間の異動があります。今年も例年通り、本店と各営業所の間を1 名ずつ交代させる異動の辞令を出しました。しかし、本店から営業所に異動する者のうち1 名が、異動できないと言ってきました。その理由は、今年子供が生まれる予定で、本人も配偶者も福岡でしか生活した経験がないため、県外の生活が不安だというものです。
 当社は、採用時にも異動について就業規則等の説明もしており、今まで拒否した者は存在しません。拒否を承諾した前例となるのも嫌なので、今回は異動命令を強行しようと考えておりますが、法律上問題ないでしょうか。

  回 答

 【異動命令の根拠】
 異動命令は、就業規則に根拠があることが前提となります。貴社の場合、就業規則に根拠があり、採用時にも説明されていることから、問題はないようです。
 最高裁の判例も、就業規則等の定めがあり、実際に頻繁に異動を行った実績があることを前提に、「会社は個別的同意なしに被上告人の勤務場所を決定し、これに転勤を命じて労務の提供を求める権利を有するものというべきである。」としています(東亜ペイント事件、最高裁昭和61.7.14 判決)。

【問題の所在】
 @業務上の必要性が存在しない場合
 A不当な動機、目的がある場合
 B労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせる場合
 今回のケースは、業務上のローテーションで必要性があり、特に不当な動機や目的もありません。残る問題は、子供の出生予定だけです。労働契約法第3 条第3 項は、 ワークライフバランスについて定め、生活と仕事との調和への配慮を求めています。

【私見】
 子供の出産の場合、どうしても性別で区分して検討せざるを得ません。ご質問によると、「本人」が男性なのか女性なのか明らかでありません。 仮に男性であれば、自ら出産するわけでもないし、通常甘受すべき程度を著しく越える不利益とは言い難く、異動命令は合法である可能性が高いと考えます。一方、女性であれば、今から出産を控えている時期に異動させることは、この時期の異動でなければならない極めて高度な理由が存在しない限り、生活と仕事の調和からも問題があると考えられ、違法とされる可能性が高いと考えます。
 以上から、女性従業員であるなら異動命令を撤回し、男性従業員なら異動命令を強行して良いと考えます。

【最終拒否の場合】
 最終的な異動命令に服してくれれば良いですが、全く理由を理解できないわけでもないので、多少説得も必要かもしれません。仮に最後まで拒否した場合は、異動日以後も本社に出勤してくることが考えられます。この場合、絶対に就業させないようご注意ください。その上で、懲戒処分を検討することとなります。裁判例では、異動命令拒否に対しては、懲戒解雇も有効とする例が多いようです。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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