【労働者とは】
労働基準法 9 条
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
労働基準法 11 条
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
労働者とは、 「事業又は事務所に使用される者」で「賃金を支払われる者」です。 「使用される」とは、指揮命令下で労務を提供するという意味です。
【労災保険】
労災保険は、 「労働者災害補償保険」の略で、労働者の業務災害等を補償することを目的とする保険制度です。もともと労働基準法 75 条以下は、業務災害について使用者に災害補償を義務づけています。そして、この災害補償を確実にするため、労災保険制度が設けられているのです。
【最高裁判例】
貴社のご質問内容は、同様の最高裁判例があります(横浜南労基署長(旭紙業)事件、最高裁平成 8.11.28 判決) 。最高裁は、@業務の遂行に関する指示は,運送物品や運送先および納入時刻に限られていたこと,A勤務時間は,一般の従業員のように始業時刻が定められていなかったこと,B報酬は出来高で支払われていたこと,Cトラックの購入代金,ガソリン代,修理費,運送の際の高速道路の料金等も,すべて本人が負担していたこと,等を理由として,運転手を労働者と認定しませんでした。
@Aは「使用される者」を否定する理由、Bは「賃金を支払われる者」を否定する理由、Cは労働者性を否定する補強としての理由のようになっています。労働者性を否定された結果、労災保険の適用が認められなかった例です。
【本人への説明】
最高裁判例が示す通り、 貴社の場合、 運転手は労働者に該当しないと考えられます。
従いまして、労災保険も適用されません。問題は、このことをどうやって本人に説明するかという点になると思われます。何故か労災保険が使えるはずだと信じ込んでいるようですね。
まずは、労災保険は、 「労働者災害補償保険」の略で、労働者のための保険であることを説明して下さい。意外と、労災保険は「労務中」の事故等と誤解しているケースもあります。この後、最高裁判例を説明することになります。
最高裁判例の説明をしても理解しないようであれば、どうしようもありません。この場合は、何とか説得しよう等の努力をしても無駄ですから、直接労働基準監督署に相談に行くように指示して下さい。同じ説明であっても、労働基準監督官から言われればあきらめるケースが多いと考えられます。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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