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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《平成25年9月号》
解雇?退職勧奨?
  質 問

【質問者】
 コンビニエンスストア(正社員 3 名、アルバイト 15 名)

【質問内容】
 当社は、コンビニエンスストアを経営しています。24 時間営業のため、人員、特にアルバイトの確保がいつも大変です。人員確保が重要ではありますが、中には問題が多い者も存在します。
 先日採用したアルバイトAは、真面目に仕事をしようとしてはいるものの、仕事が極めて遅く、また、なかなか仕事を覚えません。そのためレジではもたもたしてお客様からお叱りの言葉をいただくことが多々あります。注意したらきちんと返事して努力しようとしてはいるようですが、注意された事項も同じ過ちを繰り返しています。
 真面目な性格なので今後頑張れば何とかなるとは思いながらも、忙しいときにもたもたしているのを見て、 「注意されたこともできないのなら、もう辞めてもらってもいいんだけど」と言ってしまいました。実際、本当に辞められても問題ないという思いもありました。すると、Aは翌日から来なくなりました。
 数日後、労働基準監督署から電話があり、 「Aに対する解雇の件で」確認したいとのことです。出勤簿、賃金台帳、就業規則等を持参するようにと言われました。解雇したつもりはないのですが、どうすれば良いでしょうか。

  回 答

 【解雇とは】
 解雇とは、使用者の一方的な意思表示による労働契約解除をいいます。但し、訴訟等において解雇が無効とされることがあります。解雇の場合、30 日以上前に予告するか、又は平均賃金 30 日分以上の解雇予告手当支払いのいずれかが必要です(労働基準法 20 条) 。
 解雇そのものは労働基準法違反ではありません。個別事情によって裁判所が解雇を有効と認めることもありますし、無効と判断することもあります。仮に無効となっても、労働基準法に違反したことにはなりません。ところが、解雇予告をせず、さらに解雇予告手当も支払っていない解雇については、確実に労働基準法違反となります。

【労働基準監督署】
 労働基準監督署は、 労働基準法等の労働法令に関する指導を行う行政機関です。 「署」とつくように、所属する労働基準監督官は法違反に対して司法警察員としての職務を行う権限を有します。解雇予告も解雇予告手当支払いもない解雇を確認したときは、まずは法違反に対する是正勧告を行い、それでも是正しないのであれば最終的には検察庁に書類送検することになります。

【今回の調査】
 今回の調査の主たる目的は、 「解雇であるかどうか」 、解雇である場合は「解雇予告又は予告手当支払いの有無」です。ご質問の内容から、解雇予告はしていないし、予告手当も支払われていないようです。即ち、解雇であれば、解雇予告に関する労働基準法違反が認められるため、確実に是正勧告を受けることになります。

【対応方法】
 ご質問内容から、 貴社に確定的な解雇の意思はなかったものと思われます。 しかし、辞めてもらってもいいんだけど」という発言は、客観的に解雇の意思表示とみなされてもおかしくない発言と考えられます。この場合、予告手当として約 1 カ月分の賃金支払いを勧告されます。
 しかし、解雇の意思はなく、 「来なくて良い」と断言したわけでもありません。監督官には解雇したわけではなく、退職を勧奨したに過ぎないと主張することが妥当かと考えられます。監督官によっては、全く聞き入れないかもしれませんが、確定的に解雇と断定する権限があるわけでもありません。もし素直に予告手当支払いに応じることに抵抗を感じる場合は、率直にいきさつを説明し、解雇でない旨主張されることをお勧めいたします。この際、 「退職勧奨」であると付け加えてください。
 なお、今後は迂闊な発言をしないよう、十分ご留意ください。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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