【社会保険調査の目的】
社会保険調査の目的は、主に次の通りです。
@ 未加入者がいないか
A 入社日付で加入しているかどうか
B 給与額の届出(変動含めて)は適正か
C 賞与届出の有無
D 傷病手当金受給期間に賃金支払いがないか
【社会保険加入基準】
調査で最も重視されるのが、@です。社会保険は民間の保険とは異なり、会社や本人の希望や意思は全く考慮されず、法律上の適用基準を満たせば強制適用です。具体的な加入基準は、次の 2 つの両方を満たす場合です。
@ 1 日の所定労働時間が一般従業員と比較して概ね 3/4 以上
A 1 カ月の所定労働日数が一般従業員と比較して概ね 3/4 以上
以前飲食店経営者から、 「正社員は 1 日 12 時間で月 26 日勤務だから、それぞれ 3/4なら 1 日 9 時間・月 20 日以上で強制適用ですね!」と言われたことがありました。悪意はないと思いますが、全く違います。法律上 1 日の労働時間の上限は 8 時間です。
そして週 40 時間制だから 1 日 8 時間なら 1 週間 5 日で 40 時間となってしまいます。
「概ね 3/4」の目安は、1 日 6 時間・月 17 日です。即ち、1 日 6 時間程度で月 17 日程度であれば、月 102 時間しかありませんが、社会保険は強制適用となります。
1 日と 1 カ月の両方を満たせば強制適用ですが、一方でも満たさなければ逆に社会保険には加入できないということになります。例えば、1 日 5 時間で月 25 日の場合、月 125 時間労働ですが社会保険適用除外です。 また、 1 日 8 時間で月 15 日でも、 月 120時間労働ですが社会保険適用除外です。
貴社の場合、1 日 6 〜 7 時間労働であれば、月 17 日程度以上であれば強制適用になります。また、1 日 8 時間で「週 4 〜 5 日(=月 17 日を超える) 」の場合も、強制適用です。調査の結果、未加入者ということで加入手続をさせられることになります。
※ 平成 28 年 4 月から、パート等への社会保険適用対象が週 20 時間以上に拡大される予定です。
但し、当分の間は 501 人以上規模の事業所だけが対象となります。
【その他の調査】
その他社会保険調査の視点から、注意しておきたいことをまとめておきます。
まず、試用期間であっても入社日から社会保険強制適用です。給与額の届出は、基本給だけでなく諸手当もすべて含めます。通勤手当も例外ではありません。給与額が変動した場合は、社会保険等級が 2 等級以上変わった場合は月額変更手続きが必要です。賞与支払いの都度、賞与支払届をしなければなりません。傷病手当金は、労務不能で賃金を受けられない期間に対して支給されます。賃金が一部でも支給されていれば、その分は減額されます。
適正に手続きしていれば調査も恐くありませんが、何らかの漏れがあることは珍しくありません。原因の一つとして、社会保険手続が意外と複雑であることも指摘しておきます。もう少し簡素化して欲しいところです。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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