【月給制の意味】
ご存知かと思いますが、月給制の残業代 1 時間単価の計算方法を確認致します。
[固定賃金]÷[年間平均の 1 カ月あたり所定労働時間数]
※ 固定賃金は、残業代対象とならない一部賃金を除くすべての賃金
今回の 1 カ月間(14 日)の所定労働時間数は 112 時間ですが、最大 23 日勤務となる 1 カ月の所定労働時間数は 184 時間です。それでも時間単価は同額です。
仮に年間平均 1 カ月あたり所定労働時間数が 164 時間、単価 2000 円・月給 328,000円だとします。もし時給で支払えば、今回のような 14 日(112 時間)の月は 2000 円× 112 時間= 224,000 円、年間最大の 23 日(184 時間)の月は 2000 円× 184 時間=368,000 円となってしまいます。最小値と最大値が 1.5 倍以上の差になります。
月給制とは、これらの差について、各月の時間数よりも各月の賃金を安定的に支給することを目的とする給与支払方法だといえるのです。
【変形労働時間制】
それでも、所定労働日数が少ない月に休日勤務が生じ、かえって給与が高くなることは腑に落ちないままかと思います。このような事業所のために、労働法は変形労働時間制という制度を認めています。変形労働時間制とは、一定期間を平均して週 40 時間以下となるシフトを組むことで、そのシフト内であれば所定労働時間内だとみなす制度です。
変形労働時間制には、年間のうち繁忙期と閑散期の差が大きい事業所については 1 年単位、毎月の仕事量はさほど変わらない場合は 1 カ月単位等の期間設定が可能です。貴社の場合、1 カ月変形制を導入することで、年末年始を含む 1 カ月間については 3 日くらい出勤日を増やしてシフトを組めば問題を解決できそうです。
【不利益変更】
貴社の場合、既に通常の週 40 時間制で運用していますので、1 カ月単位の変形労働時間制に変更することは、労働者にとって不利益変更に該当します。従って、個別労働者の合意を得ることが必要不可欠です。もし合意が取れそうにない場合は、1 カ月変形制とすることで減額となることが見込まれる時間外手当等の年間見込額分を年収に上乗せすることを条件として合意を得る方法を検討すべきでしょう。移行措置として 2 〜 3 年間の保障で提案し、それでも合意を得られそうになければもう少し長期間の保障もやむを得ないと考えます。長い目で見れば、変形制を導入した方が事業所にとって有効であるだけでなく、現実的で公平な制度だと考えます。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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