【年給の請求】
年次有給休暇は、原則として「日」を単位とします。従いまして、当然のように当日突然年休を請求して良いものではありません。しかし、会社側がこれを認めれば、結果として年休取得できることになります。貴社の場合、体調不良の場合は、これを認めているようです。ここで問題となるのが、 「体調不良」の定義です。
ご質問内容から、本人が体調不良と申告するだけで、機械的に体調不良と認めていることに問題がありそうです。即ち、 「体調不良」の定義を具体的に定めることにより、虚偽の体調不良等を認める必要がなくなる可能性が考えられます。
例えば、 「体調不良で、かつ病院の診察を受けたとき」に限って当日申請でも年休振替を認める方法が考えられます。本当に体調不良でも病院に行くほどでもない場合も考えられますが、この場合は事後年休振替を認める対象から除外されます。このあたりを割り切ってしまえば、有効に運用できると考えます。病院に行ったかどうかについては、診断書を提出させるとなると、費用的にも現実的ではありません。診察券又は薬袋等により、通院の事実を確認すれば十分だと思います。
【退職時の年休一括請求】
年次有給休暇制度は、本来は労働による日頃の疲れをリフレッシュするような目的の制度です。人によっては、傷病等で欠勤する場合に給与が減額されないよう、とっておきたいと考える場合もあるでしょう。いずれにしても、退職時に年休残日数すべてをまとめて消化する方法は、年休制度の本来の目的から大きく逸れていると考えます。しかし、残念ながら退職時一括年休請求を禁止することは困難です(私見は、年休権の濫用で違法と考えていますが、わが国の労働法制の労働者過保護の現状から、認められない解釈だと考えておく必要があります) 。
退職時にまとめて取得されることがどうしてもイヤな場合は、@日頃から計画的に年休消化させて退職時の残日数を少なくしておく、A年休残日数を買い上げる、B訴えられれば負けることを覚悟して拒否する、からの選択になると思われます。
Bは現実的でないため割愛します。@は、各労働者が有する年休日数のうち 5 日を超える部分について、労使協定で計画的に付与することを決めることができます。または、協定等によらず、日頃から毎月 1 日くらいは状況を見て年休を取得しないか打診する方法も考えられます。年休制度の趣旨からも、健全な方法といえるでしょう。
一般に多いのがAです。買上により、退職金として支給することで、会社にとっては労働社会保険料負担が少し抑えられ、本人は社会保険負担の他所得税等も抑えられますし、失業等給付も早く受けられます。なお、退職後の年休残なので、協議して合意すれば法律上はいくらで買い上げても構いませんが、一般的には通常と同様の額とするケースがほとんどのようです。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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