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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《平成26年8月号》
健康保険被扶養者の範囲・要件とその確認
  質 問

【質問者】
 建設業(正社員 18 名)

【質問内容】
 当社は、建設業を営む株式会社です。当社を悩ませる問題の一つに、健康保険の被扶養者手続があります。以前は、被扶養者といえば、配偶者(専業主婦、又はパート主婦)か高校生くらいまでの子供ばかりでしたが、最近はそれなりの年齢の子や、様々な親族等を「扶養に入れてくれ」という者が増えてきました。30 代の子、孫、別居の祖父母、兄弟姉妹、奥さんの親や兄弟まで…  その都度被扶養者になれるかどうか確認することから始まりますが、要件を満たしているかどうか、本人に聞いてもはっきりしないケースもあります。扶養に入れるかどうか、要件を簡単に覚える方法はないでしょうか?また、従業員が状況等をはっきり回答しないとき等は、皆さんはどのような対応をされているのでしょうか?

  回 答

 【被扶養者となる大前提:扶養しているのか】
 諸要件の確認の前に、被扶養者となり得るかどうか判断する最重要の大前提があります。それは、 「実際に扶養しているかどうか」ということです。例え配偶者や子であろうと、実際に扶養していなければ、健康保険被扶養者にはなり得ないのです。
 従業員から被扶養者追加の申出があったときは、まずは「その方は、実際にあなたが扶養しているのですか?」と確認することになります。実際に扶養していないのであれば、話しは終わりです。
 後述しますが、別居の親族の場合は、実際に仕送りをしているかどうか、している場合でも、 その額が別居の親族自身の収入額よりも多いかどうかによって判定します。
 最近、フリーター等の別居の子が保険証を持っていないことから、親の被扶養者に入れようとすることが目立ちます。しかし、親が仕送りをしていない場合や、していても子本人の収入より多額の仕送りをしていなければ「扶養している」状況ではなく、当然被扶養者になれません

 【被扶養者となる大前提:年収】
 もう一つの大前提が年収見込みです。年収見込みが 130 万円以上である場合は、被扶養者とはなりません。これが少し難しいのですが、前年の所得ではないし、直近 1年間の所得でもありません。今後の見込みなのです。従って、年収 130 万円というよりも、これを 12 カ月で割った約 10 万 8334 円(通勤手当等を含む)以上の収入があるかどうかで判断した方が現実的かと思われます

 【同居の有無】
 既に別居の場合の仕送りの話しをしましたが、実際に仕送りして扶養していても健康保険被扶養者となり得るのは、 [父母及び直系尊属、配偶者、子、孫、弟妹]に限られます。別居の姉、別居の配偶者の親等に仕送りをして扶養していても、被扶養者とすることはできないのです。逆に、同居の場合は、広く[三親等以内の親族(血族、姻族) ]であれば、実際に扶養していれば被扶養者となり得ます。

 【情報不足】
 健康保険被扶養者の手続は、事業所に確認・届出の義務が課されています。従業員から被扶養者手続を依頼されたら、被扶養者要件の確認をしますが、従業員が状況を把握していないことも珍しくありません(特に収入の状況) 。この場合、状況的に明らかに 130 万円未満であることが確実であれば良いかもしれませんが、よくわからないときは確認できるまで手続きすべきではないと考えます。特に年末調整の際に被扶養者として申告していない者については、何故この時期に被扶養者にしようとしているのか、背景を聞いてみることも必要です。
 また、別居の有無について、 「住民票上は同居」等の回答があることがあります。
 これは明らかに別居です。健康保険被扶養者は、 「実際に同居して扶養しているかどうか」という判断基準なのです。
 事業所の立場として、 確認不足のまま手続を進めないよう留意する必要があります。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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