【ノーワークノーペイの原則】
所定労働時間のうち実際に就業しない時間があれば、それが事業所が休業を命じた場合等の特別な場合を除き、賃金は発生しません。月給制の場合は、不就労時間相当額の賃金を控除して構いません。このことを、 「ノーワークノーペイの原則」といいます。従って、仕事中にサボっていた時間分の賃金を控除することは、法律上全く問題ありません。
しかし、問題になるケースがあります。大雑把に区分すると、@労働契約で仕事中にサボっていても賃金を支払う契約になっていた場合、A一部の者のみ差別的に賃金控除の対象としている場合、等においては、サボっていた賃金を控除することが問題となる可能性が考えられます。
【労働契約の確認】
「サボった時間も賃金を支払う」と書面明示して労働契約を交わしているケースはないでしょう。一方で、 「月給制の場合、不就業時間があっても賃金控除しない」というケースはあり得ます。しかし、実際に控除されているわけですから、むしろ「不就業時間に対し賃金は支給しない」としていると思われます。場合によっては、労働慣行で支給することとなっているケースも考えられますが、貴社の場合は実際に控除されているためこれもないでしょう。
以上の通り、 労働契約はサボっていても賃金を支給する内容でないと考えられます。
【差別的取扱いに当たるか】
労働法は、複数の労働者に対し、事業所の恣意的取扱いで差別することに対して厳しい考え方を有します。好業績者はサボっても賃金控除されず、低業績者は賃金控除されるわけですから、差別的取扱いに当たる可能性が考えられます。
しかし、私見は、あらかじめ貴社の考え方が周知され、本来賃金控除すべき不就業時間であっても好業績者に限って優遇措置をとっているわけですから、差別的取扱いに当たらない余地があると考えます。ただ、好業績と低業績の具体的な基準が明確にされているか、そしてその基準について忠実に運用されているか等、個別具体的な事項を総合的に勘案する必要があると考えます。
貴社における営業職は、会社への貢献度が売上に比例するようです。今後も同様の運用をするなら基準を明確にするしかありません。しかし、考え方を変えて全員一律的に不就業時間は賃金控除の対象とし、その代わりに売上に応じて好業績者を給与や賞与で優遇するしくみにされた方が無難だと考えます。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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