【年次有給休暇】
年次有給休暇とは、勤続 6 カ月以上の従業員に対し、勤続年数に応じて最低年 10 日〜 20 日の有給休暇を付与することが義務づけられている制度です。
一般に、 「有給(有休) 」と略されることが多いようです。しかし、この略し方は、「給与が有る」又は「給与有りの休み」のような意味になり、正確ではありません。
例えば、 忌引き等について、 その事業所が有給とするか無給とするか決定できますが、有給とするのであればまさしく有給休暇となります。年次有給休暇は、@法律が唯一有給による休暇を規定していること、A休暇取得理由を制限していないこと、B毎年発生すること、等の特徴のある独特の制度です。従って、本稿は「年休」と略します。
【付与義務、時季変更権】
年休は、労働者が休暇取得を申請した場合、原則としてこれを付与する義務があります。言い替えると、労働者が申請しなければ、付与する義務は有りません。貴社の場合、これまで問題にならなかったのであれば、誰も年休申請をしなかったということです。しかし、仮に申請があれば、よほどの事情がなければ付与する義務が有ります。この「よほどの事情」がある場合は、本人が指定した日でない日を提案して年休取得日を変更させます。これを時季変更権といいますが、年休申請をなかったことにはできないのです。また、 「よほどの事情」とは、日々の繁忙は全く理由にならず、特別な事情であって、代替要因の確保もできないような状態をいいます。貴社の立場では納得しがたいと思いますが、経済的な理由等は全く理由となりません。
【年休付与義務】
現時点で確定しているわけではありませんが、各労働者が有する年金取得可能日数のうち、最低 5 日について事業所が計画的に付与する等休ませることを義務づけられる見込です。貴社の日給制ドライバーについても例外ではありません。仮に 5 日付与が義務化されなくても、いずれ本人から申請があれば、付与する義務があります。この機会に、給与制度を見直す必要があるといえます。
視点を変え、労働者の年間給与は、例えば「年間総労働給与+年休 20 日分」を前提に設計されるとよいかもしれません。実際には時間外労働割増賃金等も念頭におく必要があり、このように単純な話でもありませんが…
【付与する休日】
仮に給与設計の問題をクリアできても、現実に休ませることができるかという問題が生じます。貴社正社員が 15 人ですから、各 5 日でも 75 日分にものぼります。場合によっては、権利意識の芽生え等により、もっと年休が活用されるかもしれません。
理想は増員です。これが困難な場合は、あらかじめシフト作成するか、又は会社全体を休むことが可能な日に年休付与するしかありません。いずれにしても、多くの中小企業経営者にとっては極めて厳しい話しです。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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