【標準報酬月額と社会保険料率】
社会保険料は、標準報酬月額と社会保険料率で決まります。平成 27 年 4 月現在の料率は、厚生年金保険料率は全国共通で 174.74/1000、健康保険料率は都道府県別で福岡県の場合は 100.9/1000 です。あと介護保険料がありますが、省略します。
標準報酬月額とは、毎月の給与総額を等級に分けた額をいいます。月 15 万円から 20万円までは 1 万円刻み、月 20 万円から 38 万円までは 2 万円刻み、38 万円から 71 万円までは 3 万円刻みです。給与月額 164,000 円の場合、等級は 15 〜 20 万円の 1 万円刻みで最も近い数値である「16 万円」になりますが、給与月額 165,000 円だと「17 万円」になります。同様に給与月額 229,000 円の場合、等級は 20 〜 38 万円の 2 万円刻みで最も近い数値である「22 万円」になりますが、給与月額 23 万円だと「24 万円」となります。
この標準報酬月額である「16 万円」 、 「17 万円」 、 「22 万円」 、 「24 万円」に社会保険料率を乗じた額が、社会保険料となります。さらに、その半額が従業員本人の負担となります。
【手取り逆転の理由】
社会保険料率は、厚生年金の場合で標準報酬月額 1000 円ごとに 174 円 74 銭という計算になります。即ち、標準報酬月額等級が 1 等級違うだけで、月額 1 万円、又は 2万円等の差が生じます。 福岡県の場合で、 厚生年金と健康保険の合計料率は 275.64/1000ですから、従業員が半額負担するとして標準報酬月額等級が高くなると 1 万円につき1378 円の保険料負担増となります。これが 2 万円だと 2756 円です。給与が 20 万円台又は 30 万円台の方であれば、標準報酬月額等級が一つ上がると社会保険料本人負担額が 2756 円高くなるということです。仮に昇給額が 1,000 円〜 2,700 円等であれば、結果として手取額が減ってしまうということになります。
【算定基礎届】
標準報酬月額は、基本的に 4 月から 6 月の間に支給した給与総額で決まります。難しいのが、残業代等も含めて決まりますから、4 月昇給の時点で確定的に予想できるのは、残業等が全くない事業所等となります。仮に全く残業代等がなく、月給額が固定的に支給されるようであれば、昇給後の額を標準報酬月額表に当てはめて、等級が上がるかどうか確認して調整すれば事前対策は可能ということになります。
お気づきいただいたかもしれませんが、昇給月を 7 月に変更するという考え方もできます。こうすれば、昇給後に 2 等級以上変動していない限り、原則として社会保険料はそのまま変わりません(10 月に厚生年金保険料率が増額され、少し負担増となりますが) 。貴社の場合、昇給予定額からみて、昇給後に残業代等が多く生じない限り 2等級以上の変動はなさそうです。結論として、昇給月を 7 月に変更できないか検討されるのが最も良さそうです。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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