【65歳までの雇用義務】
定年制度をおくかどうか、また、定年制度を定めるときは何歳にするかは、本来事業所の自由です。しかし、高齢者雇用安定法改正により、平成 10 年から定年を定める場合は満 60 歳以上とすることが義務づけられました。
さらに、定年を 65 歳未満と定めたときは、本人の希望に応じて満 65 歳まで引き続き雇用することが義務づけられています。若干例外があり、平成 25 年 3 月までに継続雇用の基準を労使協定で定めていた場合は、平成 25 年 4 月から平成 37 年 3 月までの期間について 3 年毎に最長雇用義務は 61 歳、62 歳、63 歳、64 歳と引き上げられつつも基準を満たさない者について継続雇用義務が 65 歳未満となるケースがあります。
【定年制度の見直し】
貴社の場合、満 60 歳定年の次に、嘱託社員の定年として満 65 歳という定めがあります。事実上「第二定年」といえます。法律上、定年を定める場合は 60 歳以上とする義務はあっても、定年を一回だけしか定められないとする義務はありません。
即ち、65 歳を超えて雇用する方について、 「第三定年」を定める方法が考えられます。
例えば、第三定年として、満 68 歳又は満 70 歳を明確に規定することにより、最長期限を確定してしまう方法です。
【65歳を超える更新】
貴社には、65 歳を超える嘱託社員が 2 名在籍しています。しかし、65 歳を超えて継続雇用する法律上の義務はないわけですから、65 歳到達時に本人が更新を希望しているのに、貴社が断らなければならないときの問題が残ります。
結論からいうと、65 歳を超えて更新する「特例」について、あらかじめ就業規則等に明示し、会社側が指名しない限り更新しないルールを確立しておくべきだと考えます。また、64 歳までの最後の更新をする際に、更新契約書に「期間満了をもって終了し、更新しない」と明示しておくことも重要です。
ところで、先輩嘱託社員の多くの方が 65 歳を超えて雇用されている場合等、客観的に本人に合理的な期待権が認められるような状況の場合が考えられます。言い替えると、ある特定の嘱託社員だけ 65 歳で終了したい場合です。このような場合は、やはりあらかじめ更新しない基準を明確にし、紛争になっても客観的に証明できるよう準備しておく必要があるといえます。
【5年を超える更新】
もう一点問題があります。労働契約法は、期間の定めのある労働契約が通算 5 年を超えた場合、本人が希望すれば期間の定めのない労働契約に自動転換する旨定めています。無期転換といいます。これは、60 歳以上の労働者についても適用されます。
第三定年でクリアできれば問題ありません。しかし、一部に限って本人が働けるなら何歳まででも雇用したいケース等が考えられます。この場合、今年 4 月施行の有期雇用特別措置法が定める申請により満 60 歳以上の期間が通算されない制度を利用することになります。申請条件等詳細は省略しますが、やや煩雑であることと、事実上 「第三定年」を失うことから、特別措置申請は避けたいところです。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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