【通勤手当】
通勤手当は、多くの事業所で広く採用されている制度ですが、法律上は通勤手当を支給する義務はありません。従って、各事業所の任意の制度ということになります。具体的には、各事業所の定めた就業規則又はこれに準ずるもの、若しくは個別労働契約の内容によって大きく異なってきます。
貴社の場合、公共交通機関による通勤と、自転車等による通勤とで、明確にルールが別れているようです。従いまして、そのようなルールがあることを前提に検討したいと思います。
【欠勤時の取扱い】
欠勤時の通勤手当の取り扱いも、基本的には就業規則等の定めによります。ただ、特に定めがない場合でも、明確に控除しないとされていたり、過去に控除しない慣例ができている場合等でなければ、当然控除できると考えます。そもそもノーワーク・ノーペイの原則から、不就労日には賃金が発生しないことが原則です。仮に欠勤しても通勤手当だけ支給するとすれば、1 カ月間ほとんど欠勤しても、通勤手当だけ通勤していないのに満額支給となり、大いに矛盾します。言い替えると、1 日でも欠勤すれば 1 日分日割り計算して控除するのが原則です。ただ、1 〜 2 日欠勤くらいなら面倒だし控除しなくて良いというお考えなら、例えば月○日以上出勤したときは満額支給するとか決めておけばよいかと考えます。
【不正受給の返還】
酷い事務員ですね。給与計算担当者ということは、自転車通勤の場合の通勤手当支給方法等を熟知しているわけですから、極めて悪質だと考えます。ご指摘の通り欺されていますね。
賃金の時効は確かに 2 年です。しかし、これは賃金として支払ったものではなく、欺されて支払ったものです。不当利得に該当しますから、時効は 10 年です。勤続 5 年ということですから、入社時まで遡って全額返還させて構いません。さらに、悪意の場合に当たるので、年利 5 %の法定利息を付けて返還させて良いことになります。
【解雇】
解雇が有効か無効か、最終判断は裁判所次第ですが、私見は解雇事由にあたると考えます。ついうっかりと間違えたような内容ではなく、確信的ですから刑法の詐欺罪にあたる犯罪行為です。しかも、給与計算担当者が、入社以来 5 年も犯行を継続しているのです。 具体的な金額はわかりませんが、 乗り換えが必要だということですから、5 年分で相当な額になると思われます。
気になるのは、貴社の従業員数が 10 名未満であることから、就業規則があるのかどうか、ある場合は、このような行為が解雇事由と規定されているかどうかです。規定がなければ、懲戒解雇は厳しくなります。この場合は、やむを得ない事由による普通解雇を選択するかどうか検討することになります。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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