【強制適用】
法人事業所や、原則 5 人以上の個人事業所は、社会保険制度は強制適用です。しかし、以前より減少したとは思いますが、強制適用でありながら社会保険制度に加入していない違法な事業所も存在します。特に小規模な事業所にそういうケースが目立ちますが、貴社はきちんと加入されていますね。まだまだ手ぬるい面がありますが、未加入事業所に対する加入督促は、以前と比較するとかなり強めになってきています。
さて、強制適用といえば、各従業員個人についても社会保険強制適用です。例外として、@ 1 日の所定労働時間が通常の従業員と比較して概ね 3/4 未満、A 1 カ月の所定労働日数が通常の従業員と比較して概ね 3/4 未満、B 2 カ月以内の期間を定めて雇用した者で更新の予定がない臨時雇用、等のいずれかに該当する場合は、適用除外となります。いずれにも該当しない場合は、採用日(一般に最初の出社日)から社会保険に加入せざるを得ないということになります。
※平成 28 年 10 月から、週 20 時間以上のパート等は強制適用となる予定ですが、平成 31 年 9 月までの間は、501 人未満の中小企業は移行期間で上記@ABで判断します。
【加入手続】
社会保険は、民間保険と異なり、加入手続によって加入するわけではありません。
入社日に法律上当然に社会保険被保険者となり、そうなったことを後日「届出」しているという考え方なのです。加入手続の書類の名称は「被保険者資格取得届」です。
申込書でも申請書でもありません。従って、入社日以後で社会保険届出前にケガした場合でも、健康保険給付が受けられるのです。民間保険とは全く違う取扱いです。
このことからわかるように、もし入社から 1 カ月経過後に手続きしても、社会保険加入日は入社日となります。仮に手続き前に退職した場合は、正しくは「取得届」と「喪失届」の両方を同時に提出することになります。従って、手続を遅らせても、法律上は全く意味がないのです。
実態として、数日間等の極めて短期間で退職した者について、社会保険手続きをしないままとなるケースがあるようです。ちょうど調査等が入らない限り、そのまま問題にならないことが多いようです。しかし、今後マイナンバー制度によりすぐに把握されやすくなることが想定されますし、手続はきちんと行うべきでしょう。
【同月得喪】
平成 27 年 10 月から、公務員の共済年金が厚生年金と一元化されました。元々厚生年金だった側にとっては、さほど気にする変更は無いのですが、入社月に退職した従業員の厚生年金の取扱いが、少しだけ変更されました。
従来は、1 カ月分徴収されるだけでした。退職従業員が同月内に再就職して厚生年金に加入した場合に限り、請求すれば還付される仕組みでしたが、同月内に採用⇒退職⇒他社就職、ですからほとんど該当例がありません。
これが平成 27 年 10 月からは、退職従業員が国民年金に加入した場合は、還付されることになりました。国民皆年金なので、退職後すぐに就職しない限り国民年金に加入することになります。ただ、国民年金の加入年齢は満 20 歳から満 59 歳までです。19歳や 61 歳等の場合は、対象となりません。それでも、採用した月の月末の前日までに退職した場合は、該当する可能性が高いと思われます。該当者があるときは、年金事務所から事業所に通知され、それから還付請求手続きをすることになるようです。
ちなみに、還付されるのは厚生年金保険料です。健康保険料は還付されません。昨今、採用してすぐに退職する者が増加しているようですが、何かと頭が痛い問題だと思います。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
|