【助成金制度と背景】
助成金は融資等と異なり、借入金ではありませんから返済の必要がありません。端、 「もらえるお金」ということになります。この魅力はあまりにも大きく、事業所が思わず飛びつきたくなることは当然かもしれません。
しかし、世の中、 「タダより高いものはない」とも言います。助成金制度も、単純にお金をもらえるというだけの話しではなく、そのための前提条件があります。大雑把に言えば、政府が目指す方向性に沿った雇用等をする事業所に対し、その雇用等のための費用の一部を助成するという考え方です。不正受給は詐欺罪を問われます。政府が目指す方向の一つに、年金支給開始年齢の引き上げとその時期の本人の収入確保、また、再就職が困難と考えられる年代のため失業率の抑制等のため、高齢者雇用が挙げられています。そして、有名な助成金制度として、 「特定求職者雇用開発助成金」が設けられています。高齢者雇用だけでなく、障害者、母子家庭の母等も助成対象となりますが、以下、高齢者に絞って説明します。
【支給対象と支給額】
支給対象となる高齢者の具体的な年齢は、満 60 歳以上です。かつては満 64 歳までが対象でしたが、数年前から満 65 歳以上も対象とされています。
支給要件として最も重要な事項が、公共職業安定所(ハローワーク)の紹介による新たな採用ということです。一般の求人媒体を利用して雇用した場合や、知人や従業員の紹介等による雇用の場合は対象となりません。何らかのルートで面談して採用を予定し、その後ハローワークの紹介状を取り付けても不正受給となります。
雇用条件については、所定労働時間が最低でも週 20 時間以上であれば対象となります。パートでも良いわけです。ただ、継続雇用が見込まれることが条件ですから、例えば 1 年間だけの雇用等の場合は対象となりません。現行法の関係で、65 歳以上まで継続雇用が可能な前提が必要ですが、63 歳以上の者を雇用する場合は 2 年以上の雇用見込みが必要です。
支給額は、所定労働時間が週 30 時間以上の場合は 60 万円(大企業等 50 万円) 、週 2時間以上 30 時間未満の場合は 40 万円です。具体的には、採用後 6 カ月経過後に半額を申請し、さらに 6 カ月(採用後 1 年)経過後に残り半額を申請します。採用当初 1年間に対する助成金のような感じです。
【不支給となる例】
助成金の財源は雇用保険料です。労働保険未加入の場合や保険料を滞納している場合は対象となりません。また、後日行われる調査への協力等も条件となります。
申請しても不支給となる例として最初に挙げておきたい事項は、支給申請期間に申しなかった場合です。しっかりと申請期間を確認しておく必要があります。そして、実際に不支給となる最も多い例は、解雇や退職勧奨等、雇用保険法上の「事業主都合」による離職があったときです。これは助成金対象者に限られず、すべての従業員が対象とされます。また、雇用保険法上の特定受給資格者となる離職理由となる者が 4 人以上、かつ 6 %以上である場合も同様です。
さらに、最近(昨年 10 月)追加された不支給事由として、助成金対象労働者の採用日から 1 年経過した時点における離職率が 5 割を超える場合、さらにもう 1 年後(通算 2 年)の離職率が 5 割を超える場合(採用時 60 〜 64 歳のみカウント)があります。ただ、離職率 5 割のカウントは、助成金対象者が 4 人未満の場合は不支給とされません。貴社の場合、長続きしない人が多いということですから、1 年間に助成金対象者を 5 名以上雇用しない方がいいかもしれません。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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