【マタハラ】
マタハラとは、マタニティハラスメントの略語です。妊娠だけでなく、出産、育児等も含めて、これらを理由として嫌がらせをしたり、労働条件で不利益な取扱いをしたりすることをいいます。今回のご相談のマタハラは、前者の嫌がらせにあたるかどうかという問題になります。ただ、いただいた情報だけでは、具体的にどのような行為があったか不明確で、マタハラにあたるかどうかの判断は難しいです。
【妊娠と就業】
労働基準法は、産後 8 週間については原則就業禁止としていますが、産前については就業を禁じていません。出産当日までを産前としていますので、法律上は出産するまで就業させても違法ではないということになります。産前 6 週については本人の希望があれば休業させなければならないとなっていますが、逆に言うと、産前 6 週に入る前までは本人が希望しても、これを認めずに働かせても違法ではないわけです。
しかし、妊婦です。もし仕事が原因で取り返しのつかないことが生じたら、大問題です。そう考えますと、時期を見て産前休業させるべきだということになります。
ご相談の内容から、仕事の内容に、重い物を運ぶことが含まれているようです。これは、妊婦にさせるべき仕事ではないでしょう。会社の方針として、具体的な重さを示して、それ以上の重い物について妊婦に運ばせないように指示通達をしておく必要があると考えます。
あと、いつから産前休業に入るかについて、本人と打ち合わせをして確認しておくべきです。作業職なので、できれば少し早めの休業を認めることが望まれます。
【マタハラ原因の一つ】
マタハラが生じる原因として、大別して 2 つあると考えます。1 つめは、周囲の無理解です。そしてもう 1 つが、本人の問題です。
妊娠、育児等において、 「妊婦だから」 、 「子が病気したのだから」という理由に基づいて、休んだり特権的なことが認められることについて「当然」のような感覚をもっているケースこそ、本人の問題です。
本人の性格に起因するのでしょうが、客観的に冷静に考える必要があると思います。労働契約とは、労働者が定められた労働を提供し、事業所がそれに対して賃金を支払う契約です。即ち、本来は個人的な理由で休むことは契約違反です。これが妊娠や育児の場合は、例外的に保護されているにすぎません。そして、本人は、いつでも退職する選択があるにもかかわらず、労働契約の継続を選択しているわけです。労働契約を継続する以上、当然に労働者として周囲の労働者との協調性が求められます。この認識に欠けると、周囲との軋轢が生じかねないのです。
従って、本人とよく話をし、自分だけ気遣ってもらうことを望むのではなく、周囲にも気遣うよう指導されることが必要かと考えます。周囲とうまくやってもらわないと、マタハラとして貴社が責任を問われるリスクもありますから、慎重なご対応をお願い致します。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
|