【ブラック企業とイメージ】
貴社は、固定残業代について合法的に運用されているということですから、詳細は分かりませんが、少なくともブラック企業と言われる筋合いはありませんね。そもそもブラック企業という言葉自体、きちんとした定義があるわけではないため、個々人が主観的に使用しているケースが多いように感じます。
結論だけ言えば、特に若い世代において、固定残業代に対するイメージが良くないことは確かです。ただ、イメージが良くないだけであり、固定残業代がそのままブラックかというとそうではありません。各事業所の固定残業代には、合法的なものもあれば、中には違法なものもあるのが実態です。
【事業所の悩みどころ】
本来的な固定残業代制度は、例えば月給 20 万円に、別途 5 万円の固定残業代を支給するものです。事業所にとっては、5 万円分の残業がなくても 5 万円を支給しなければならないため、実際の時間に応じて支給した方が有利なはずです。しかし、採用に際しては、総額 20 万円と 25 万円とでは、やはり 25 万円の方が応募者の目にとまりやすいと考えられるわけです。即ち、貴社の場合、具体的な給与額の設定はわかりませんが、営業手当(固定残業代)制度を廃止すれば、求人の条件としての固定給総額が低くなることになります。それで構わなければ、廃止してもよいでしょう。
廃止すると、実際の残業時間数の状況にもよるのですが、恒常的にある程度の時間数の残業があるわけですから、その時間数によって直接給与が増減することになります。従来も営業手当の 45 時間相当を超過すればそうだったのですが、今後は 45 時間以内も時間数次第となるわけです。事業所の視点として、特に営業職に対しては、労働時間数よりも営業実績を重視したいわけですが、現実の給与額は時間が長い方が高いという状況になりかねないわけです。このあたりは、固定残業代だけでなく、全体的な給与制度の見直しも視野に入れる必要があると思われます。
【固定残業代継続】
固定残業代制度を継続する場合は、とにかく合法的な運用を継続し、いつ誰に聞かれても堂々と回答できる状況にしておくことが必要不可欠です。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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