【会社都合】
一般に「会社都合」 、 「自己都合」という用語が広く用いられているようですが、これは雇用保険における基準の一つです。通常、会社都合とは、会社の都合による解雇、退職勧奨、事業所倒産等、退職の意思がなかった労働者が退職を余儀なくされるような事由をいいます。
会社都合の場合、雇用保険の失業等給付においては、年齢や勤続年数に応じて、自己都合退職よりも優遇されます。自己都合の場合は 3 カ月間の支給制限期間がありますが、会社都合の場合はありません。言い替えると、退職後公共職業安定所に出頭すれば、待期期間である 7 日間経過後には失業等給付の支給対象期間に入ります。また、自己都合の場合、勤続 5 〜 6 年なら給付は最大 90 日分ですが、会社都合の場合は年齢に応じて 120 日〜 240 日分となります。
【不正受給】
会社都合と自己都合とで、これだけ給付内容が異なるわけですが、退職理由について虚偽の記載をして不正に受給すれば、当然ながら詐欺にあたります。不正受給の場合、原則として調査等で発覚すれば最大「3 倍返し」のペナルティが用意されています。不正に荷担した事業所も、連帯して責任を負います。今後は、労働者から頼まれても、絶対に応じないようお願い致します。
【解雇?】
元正社員の代理人弁護士は、離職票の記載内容と本人の話しか確認できていないと思われます。実態が自己都合退職だと知っていれば、このような内容証明を送りつけるわけにはいかないからです。
内容証明には、回答の指定期限が記載されていると思います。この期限を厳守する義務はありませんが、一般論として、概ね二週間程度以内に返信はしておきたいです。返信内容としては、@実態は自己都合退職であること、A離職票記載は、本人の依頼に応じたにすぎないこと、B解雇ではないため撤回も考えられないこと、C慰藉料は支払わないこと、を記載しておくと良いでしょう。
貴社の弱みとしては、 「不正受給に荷担したこと」が挙げられます。しかし、これについては本人と連帯して責任を負うところです。もともと会社都合ではないわけですし、嘘を嘘で塗り固める対応だけはしてはなりません。
【その後の展開】
おそらく、内容証明に既述の@〜Cを記載して返信すれば、その後再度連絡があることはないと予想します。仮にあるとすれば、自己都合退職であったことを否定し、再度解雇撤回や慰藉料を要求するような内容の可能性も考えられます。退職届を取り付けていなかったことが痛いですが、他の労働者等の証言も可能でしょうし、このような理不尽な要求には屈することなくご対応下さい。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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