【改正育児介護休業法】
平成 29 年 1 月 1 日から、改正育児介護休業法が施行されます。改正事項の一つに、対象家族を介護する労働者に対する「所定労働時間の短縮措置等」があります。改正前でも、93 日間までに限り、介護休業の取得に代えて所定労働時間の短縮措置等を選択することは可能でした。しかし、法改正によって、介護休業の取得とは別個に、最長 3 年間(2 回分割も可)の短縮措置利用が可能とされました。
具体的な所定労働時間の短縮措置による短縮時間は、所定労働時間が 1 日 8 時間の場合は短縮後の時間数が 6 時間以下とする必要があります。即ち、2 時間短縮です。
【短縮措置「等」】
実は、短縮措置は絶対の義務ではありません。選択肢の一つで、原則として次の 4つの措置から 1 つ以上を選択して措置を講ずることが義務とされています。
@所定労働時間の短縮措置
Aフレックスタイム制度の導入措置
B始業終業時刻の繰り上げ繰り下げ措置
C労働者が利用する介護サービス費用の助成等の措置
4 つの選択肢を見ていきます。@は 8 時間労働なら 2 時間短縮です。Aは始業終業時刻を労働者に委ねる措置です。医療機関ではほぼ不可能な措置です。Bは始業終業時刻をそのまま前か後ろかに繰り上げ又は繰り下げる措置です。これも事実上無理です。Cだけは可能性がありますが、措置として場当たり的な対応とするわけにもいきません。措置をとることで、他の労働者も同様に扱わなければならなたいため、例えば介護休業や時間短縮措置は全く考えていない労働者でも費用助成だけなら気軽に受けられることになってしまいます。結論として、4 つの選択肢がありながら、結論は所定労働時間の短縮措置とせざるを得ないと考えられます。
【提案の検討】
ご質問事項を検討します。最も人手が必要な時間帯に働けないのですから、いっそのこと午前中だけのパートへの切り替えの提案の是非ですね。強要ではなく、本人に決定権・選択権がある提案である以上、断られる可能性がありますが、逆に提案自体は問題ありません。しかし、本人は仕事を続けたいと言っているわけですから、将来落ち着いたら正職員としての勤務を希望していると思われます。また、午前中だけのパートになると、現行法上社会保険から外れますし、貴院の制度次第ですが賞与や退職金でも不利益となる可能性が考えられます。また、平成 29 年 1 月 1 日改正法により、家族介護をする労働者へのハラスメント防止措置が義務づけられますが、場合によっては提案したことで本人がハラスメントを受けたと感じる可能性も考えられます。
結論として、提案自体は問題なくても、リスクもあるということになります。もし可能なら、正職員身分のまま、月、火、水、金について 2 時間短縮ではなく午後の時間帯全てについて短縮の措置をとる方法を提案された方がよいと考えます。短縮された時間に対する賃金が不支給であるため、本人の生活の問題も考慮する必要がありますが、結果として同じ労働時間数であれば正職員からパートに切り替える提案より受け入れやすいのではないでしょうか。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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