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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《平成29年3月号》
何でも「パワハラです」という従業員への対応
  質 問

【質問者】
 広告業(正社員 20 名、パート・アルバイト 15 名)

【質問内容】
 当社は、広告業を営む株式会社です。広告業はもともと「パワハラ体質」の業界だと言われます。しかし当社は、5 年以上前から意識的にパワハラやセクハラが起きない組織作りを意識して取り組んできた結果、このような問題はほぼなくなったと自負しているところです。
 このような背景ですが、昨年採用した若い男性従業員は、何かにつけて「パワハラです」というのです。既述の通り、当社はパワハラ等を生じさせない努力をしてきた会社なので、パワハラと聞けば対策を講じる必要があります。この男性従業員は直接会社にパワハラ被害を訴えることはありません。何に対して「パワハラです」と言っているのか確認したところ、ミスを注意したときや、本人がしたくない仕事を命じたとき等、パワハラには当たらない内容なのです。
 問題は、当社が 5 年以上パワハラ等撲滅の取り組みをしてきたため、 「パワハラです」と言われる先輩や上司への影響です。 「パワハラ」という言葉がタブー視されるような雰囲気がある背景なので、そう言われると本人が嫌がりそうな仕事は他の人に頼んだり、また本人がミスをしても周囲が修正する等の対応をしたりするようになりつつあるようなのです。正直なところ、かなり困った状況です。どのような対応をしたら良いでしょうか。

  回 答

 【パワハラとは】
 パワハラとは、パワーハラスメントの略語で、 「パワー(=権力等) 」を背景にハラスメントを行うことを指すとして、このようなネーミングとなりました。しかし、未だに法律上明確に定義付けされているわけではありません。一般的には、業務上の必要の限度を超えて人格を攻撃する言動とかされています。
 平成 24 年に厚生労働省ワーキンググループがパワハラについて 6 類型にまとめたものが公表されました。これによるとパワハラは次のような内容とされています。ちなみに上司から部下に対するものに限られず、同僚同士や部下から上司に対する言動もパワハラになり得るとしています。
 @身体的な攻撃:身体への直接的な暴行、傷害など
 A精神的な攻撃:脅迫、侮辱、暴言など
 B人間関係からの切り離し:無視、隔離など
 C過大な要求:遂行不可能な業務の強制、仕事の妨害など
 D過小な要求:極めて程度が低い仕事の強制、仕事を与えないなど
 E個の侵害:私的なことに過度に立ち入ることなど

 【本人の主観】
 パワハラの他、セクハラもそうなのですが、本人の受け取り方、感じ方が大きく左右します。いかなる言動があったとしても、本人が不快だと感じない限り、パワハラにもセクハラにもならないのです。しかし、仮に本人が不快だと感じたとしても、その前提としてパワハラに該当するような言動がなければ、当然パワハラには該当しません。今回のケースは、パワハラには該当しないようです。

 【事業所の対応】
 結果として本人は、 「パワハラです」と言うことで、ミスしてもあまり言われなくなり、イヤな仕事から回避できるというメリットを享受しています。穿った見方をすれば、 「パワハラです」という発言は、業務命令拒否だったり、ミスの責任転嫁だったりする可能性も考えられるわけです。
 この発言によって周囲の従業員は、理由なくパワハラだと非難され、しかも仕事上もやりにくい状況に陥っています。少なくともこのまま看過するわけにはいきません。
 本人に対しては、パワハラに該当しない言動に対してパワハラだと言うことが、相手に対して失礼であるばかりか、場合によっては根拠のない誹謗中傷に当たる不当な発言であることを説明する必要があります。場合によっては、 「パワハラです」という発言自体が相手に対するパワハラとなる可能性も考えられるわけです。もし、今後も不当な発言が繰り返されるなら懲戒処分もあり得ることを通知しておいても良いと考えます。
 周囲の従業員に対しては、業務上正当な命令は堂々と命じ、またミス等はきちんと指摘、指導等するよう命じましょう。そして、本人が従わなかったり反発するようであればその都度会社に報告させ、その都度内容に応じて会社として対応することを約す必要があります。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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