【雇止め】
雇止めとは、雇用期間の定めのある雇用契約(有期契約)であって、原則として契約更新の可能性がありながら、事業所の都合で契約更新しないことをいいます。貴社が考えられている通り、解雇とは異なります。解雇とは、雇用期間の定めのない雇用契約(無期契約)又は有期契約であって契約期間の途中において、事業所の都合で一方的に雇用契約を破棄することをいいます。
有期契約の場合、契約締結時に更新の有無について明示することが必要です。原則として、@自動的に更新する、A更新する場合があり得る、B更新しない、の三択です。このうち@の場合は、自動更新ですから雇止めはできませんし、実質的に無期雇用のような感じになります。Bの場合は、最初から更新しないと定めているため、原則として更新があり得ません。雇止めは、契約条件がAであることが前提となります。
【雇止め理由証明書】
今回「雇止め理由証明書」の交付を求められていますが、一般的には「退職(解雇)理由証明書」と呼称される書面のことです。労働基準法は、退職時の証明について次のとおり規定しています。
労働基準法第 22 条第 1 項
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。 )について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
お察しの通り、雇止めも退職の一種ですから、従業員から「退職の事由」について証明書を請求された以上、書面を作成して遅滞なく交付しなければならないということになります。
【紛争予防の観点から】
退職理由証明書には、当たり前のことではありますが、退職に至った理由を記載します。一般的な話しですが、普通に自己都合退職や定年退職した従業員が、退職理由証明書を請求する例はほとんどありません。逆に言えば、解雇されたり、不本意な雇止めされた従業員が、このような証明書の交付を請求することが一般的だということです。ということは、近い将来、何らかの請求(雇止め無効等)をしてくることも考え得るわけです。
人間心理として、まだ労働紛争が勃発しているわけでもない時点において、本人の感情を害するような記載をすることは、それなりに勇気や決断力を要するものです。
しかし、後日本当に紛争になったとき、裁判所で退職理由証明書に記載した理由以外の理由を主張しても認められないとすれば、どうでしょうか。書きにくいかもしれませんが、雇止めした理由については、きちんと列挙しておくことが望まれるのです。
事業所の善意は、労働法においては足下を掬われる原因となることがあっても、事業所にとってプラスになることはありません。悲しい法律です。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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