【労働契約法第20条】
労働契約法第 20 条は、無期契約(正社員)と有期契約(契約社員)との労働条件に相違がある場合は、職務内容等を考慮して不合理であってはならないと規定しています。簡単に言えば、「仕事が同じなら、差別するな」というものです。何についての差別が問題になるかといえば、賃金だけに限られず「労働条件」とされています。賞与、退職金の他、福利厚生等も含まれることになります。
【難しい対応】
貴社の正社員の職務は、管理職、営業職、商品開発職、事務職とされていますが,実態として作業職もあり得るという状況のようです。まず最初に検討したいのは、理由の如何に関わらず、正社員については研修目的である場合を除き、絶対に作業職を担当させないことが考えられます。こうすれば、「職務内容の相違」が認められることになると思われます。
問題は、正社員であっても作業職を担当させざるを得ない場合です。実は、契約社員だけでなく、パートについても「職務内容」が同一であれば、差別的取扱いができないこととなっております(パートタイム労働法 8 条、9 条)。即ち、契約社員だけでなく、パートに対しても同じ待遇を覚悟するような話しになりかねないわけです。
【職務内容】
ここで考えたいことは、同じ作業職であっても、責任の程度、作業内容その他において、職務内容が異なるような運用ができないかという点です。現実的に難しい面が多々あるとは思いますが、そうしなければ、例の「同じ待遇を覚悟」となりかねません。どうしてもできないのであれば、やはり正社員には作業職を担当させるべきではない、という話しになります。
正社員に支給されている諸手当の内容がわかりませんが、仮にその手当が、管理職手当、営業手当、商品開発手当、事務手当等で、作業職であれば支給されないようになっていれば、とりあえず月々の賃金については作業職の正社員と契約社員等に差がないことになりそうです。このような可能性は極めて低いとは思いますが。しかし、仮にそうでも、賞与や退職金の問題からは逃れられません。
契約社員やパートと正社員との間に、賃金等について差がある状態を維持するための結論は、「職務内容が相違」という状態にするしかないのです。そのためには、既述の通り、そもそも正社員に作業職を担当させないことが客観的に最も認められやすい対応となります。どうしてもこれができないときは、作業職でも正社員と非正社員との間における職務内容について、客観的に説明できて納得してもらえる相違がある状態にするしかありません。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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