【強行法規】
そもそも巫女の業務に対し、労働基準法等が適用されるのかという問題があります。
詳細は省略しますが、実態が労働契約であれば適用されることになります。
労働法が適用される場合、本人との約束(合意)と労働法の規定のどちらが優先されるのかという点が、今回の最も大きな争点です。
結論として、労働基準法等は強行法規です。たとえ当事者が真の自由意思をもって合意したとしても、法律の規定に抵触すればその部分は無効となり、法律の基準が適用されることになります。
【@長時間の日当設定】
労働基準法は、法定労働時間として1 日8 時間という基準を定めています。当事者が、日給で給与を定めた場合、特段の定めがなければその給与は長くても8 時間分ということになってしまいます。11 時間拘束していますから、仮に1 時間休憩として10時間労働なので、8 時間を越える2 時間が時間外労働となってしまいます。日給1 万円なので、単純に1 万円を8 時間で割った1250 円が時給として、この時給の2 割5 分増の2 時間分で3125 円の支払い義務が生じそうです。
視点を変えて、最初から時給1000 円で10 時間労働1 万円としていれば、支払不足は2 時間分の割増し部分だけで済みました。単純に、時給1000 円なら250 円の2 時間分で500 円だけです。深夜労働(22 時〜翌5 時)という視点から、時給800 円+深夜手当200 円とすると、さらに良い感じです。この場合、5 時〜 9 時の間は1 時間休憩3時間労働として、この3 時間はすべて割増しで支払うこととすれば時給800 円+割増賃金200 円となり、結論として10 時間すべて1 時間当たり1000 円となります。
【A手待ち時間と労働時間】
拘束9 時間で実働5 時間の場合、何時間分の給与支払が必要となるかというのが争点ですね。一応1 時間の休憩はあることを前提に検討します。地方の小さな神社の場合、特に初詣客が押し寄せることもなく、実働は本当に5 時間以内だったのでしょう。
ここでも労働法の壁が立ちはだかります。休憩時間は給与支払義務はありませんが、労働から完全に解放されることが求められます。仮に実際に労働しなくても、場所的拘束を受けてその場から離れられないのであれば、労働時間とされてしまうのです。
結局、9 時間拘束のうち1 時間は休憩だったとしても、8 時間分の給与支払が必要だということになります。
平成30 年正月時点で適用される福岡県最低賃金は、789 円です。8 時間分だと6,312円ですから、残念ながら最低賃金を下回っています。差額の1,312 円については、別途支払義務があります。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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