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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《平成30年2月号》
正月の巫女アルバイトの給与
  質 問

【質問者】
 神社(神職1 名)

【質問内容】
 当社は、歴史ある神社です。福岡県のとある地域に根ざした神社で、日頃はほとんど無人です。宮司である私は、平日は民間企業で勤務しています。神社での奉仕は、毎年1 回の例祭と、正月行事です。あとは、氏子さんから依頼があったときに、その都度対応させていただいております。
 正月行事と例祭は、氏子総代の方々及びその家族のご尽力によって成り立っています。正月の臨時的な巫女助勤についても、氏子総代の関係者等に手伝ってもらい、この場合は謝金のような形でお小遣い程度のお礼をしておりました。
 ところが今年の正月は氏子総代の関係者に巫女助勤の適任者が全くいなくなりました。来年以降も状況が変わらないので、今回から一般向けにアルバイトとして公募することとしました。その結果、なんとか2 名にお願いすることになりました。
 条件として、2 交代制で、@ 12 月31 日22 時〜 1 月1 日朝9 時迄、A 1 月1 日〜 3日の朝8 時〜 17 時迄、という2 名です。アルバイト料は、@は日給1 万円、Aは日給5,000 円(3 日間で1 万5000 円)としました。実は、昨年まで氏子総代の関係者に巫女助勤をお願いしていた際と同じ額の設定です。
 ところが、2 名ともアルバイト料を渡した後、異議を申し出てきたのです。@は、8時間を越えているから残業代を付けて欲しい、Aは最低賃金を下回っているから差額を払って欲しいというものです。
 しかし、@は最初から22 時から翌9 時までの11 時間で1 万円と約束していましたし、Aも同様に時間を示して安いけど実働は5 時間以内だからといって納得してもらったという経緯がありまして、納得できません。
 この2 人の申出は、法律的にはどうなんでしょうか。

  回 答

【強行法規】
 そもそも巫女の業務に対し、労働基準法等が適用されるのかという問題があります。
 詳細は省略しますが、実態が労働契約であれば適用されることになります。
 労働法が適用される場合、本人との約束(合意)と労働法の規定のどちらが優先されるのかという点が、今回の最も大きな争点です。
 結論として、労働基準法等は強行法規です。たとえ当事者が真の自由意思をもって合意したとしても、法律の規定に抵触すればその部分は無効となり、法律の基準が適用されることになります。

【@長時間の日当設定】
 労働基準法は、法定労働時間として1 日8 時間という基準を定めています。当事者が、日給で給与を定めた場合、特段の定めがなければその給与は長くても8 時間分ということになってしまいます。11 時間拘束していますから、仮に1 時間休憩として10時間労働なので、8 時間を越える2 時間が時間外労働となってしまいます。日給1 万円なので、単純に1 万円を8 時間で割った1250 円が時給として、この時給の2 割5 分増の2 時間分で3125 円の支払い義務が生じそうです。
 視点を変えて、最初から時給1000 円で10 時間労働1 万円としていれば、支払不足は2 時間分の割増し部分だけで済みました。単純に、時給1000 円なら250 円の2 時間分で500 円だけです。深夜労働(22 時〜翌5 時)という視点から、時給800 円+深夜手当200 円とすると、さらに良い感じです。この場合、5 時〜 9 時の間は1 時間休憩3時間労働として、この3 時間はすべて割増しで支払うこととすれば時給800 円+割増賃金200 円となり、結論として10 時間すべて1 時間当たり1000 円となります。

【A手待ち時間と労働時間】
 拘束9 時間で実働5 時間の場合、何時間分の給与支払が必要となるかというのが争点ですね。一応1 時間の休憩はあることを前提に検討します。地方の小さな神社の場合、特に初詣客が押し寄せることもなく、実働は本当に5 時間以内だったのでしょう。  ここでも労働法の壁が立ちはだかります。休憩時間は給与支払義務はありませんが、労働から完全に解放されることが求められます。仮に実際に労働しなくても、場所的拘束を受けてその場から離れられないのであれば、労働時間とされてしまうのです。  結局、9 時間拘束のうち1 時間は休憩だったとしても、8 時間分の給与支払が必要だということになります。
 平成30 年正月時点で適用される福岡県最低賃金は、789 円です。8 時間分だと6,312円ですから、残念ながら最低賃金を下回っています。差額の1,312 円については、別途支払義務があります。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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