【労働契約】
労働契約は、従業員が事業所の指示命令に従って労務に服し、これに対して賃金を支払うことを約する契約です。所定労働日、始業時刻、終業時刻等も、すべて契約内容です。従って、欠勤や遅刻早退等は、いずれも契約違反となります。契約違反であっても、その程度の問題があります。同じ欠勤でも、正当な理由があって事前連絡を経た欠勤と無断欠勤とでは重さが違います。問題の従業員は、当日ではありますが、連絡はしているようですね。ただ、周囲が問題視するほど、回数が多いようですが。欠勤や遅刻早退等の頻度があまりにも著しく、さらに改善が見込めないのであれば、労働契約を継続することに著しい支障があると考えることは可能だと思われます。
【問題の本質】
今回の問題の本質は、本人の性格的な問題だと考えます。そのような状態で、ぬけぬけと「きちんと働いている」と言えるわけですし、さらに「パワハラです」と責任転換してしまうわけですから。そして、周囲に迷惑を掛けていることについては、何も感じていないのでしょうか。周囲の従業員も腫れ物を扱うような対応となるのは仕方ないと言えるでしょう。結論として、貴社の対応は大きく分けて二つの方向性のいずれかとなります。今の状態が続くことが問題なのですから、この問題を解消するためには、@本人を改善させる、A本人を退職させる、のいずれかしかないわけです。そして、貴社は既にAを選択している状態だと言えます。
【解雇】
特に長時間労働もパワハラもなさそうですから、本人の「抑うつ状態」は、私傷病です。たまに精神疾患に罹患している人は休職等を経なければ解雇できないと考える方がいらっしゃいますが、そのようなことはありません。現に、今回は就労不能と診断されているわけでもありませんので、貴社において休職事由にも該当していないものと思われます。
おそらく貴社の就業規則の普通解雇事由として、「心身の傷病等のため業務に堪えられないと認められるとき」のような規定があるのではないでしょうか。この規定に該当することを理由として、解雇するかどうかを決断するということになるかと思います。ただ、なんとなく想像されていると思いますが、本人から解雇無効を訴えられた場合に、解雇が有効と認められるかどうかは別の話となります。従って、仮に訴えられて解雇が無効と判断される可能性があっても、このままではどうしようもないため解雇するという決意のようなものが必要となります。
実際に解雇すると決心した場合も、いきなり解雇するのではなく、まずは話し合って退職勧奨をするべきです。そのときに一定の条件を示すことで、合意を得られる可能性もあるわけですから。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
|