【均等待遇と均衡待遇】
一般に「同一労働同一賃金」と言われますが、ご指摘のとおり、 「同一でない労働でも同じような賃金」という考え方があります。同一労働同一賃金は、 「均等待遇」とも表現されますが、同じ職務なら同じ賃金という考え方です。これに対し、職務が異なる場合でも、その実態に照らして、不合理な相違を設けてはならないとする考え方を、 「均衡待遇」といいます。
既に裁判例が次々と出てきておりますが、皆勤手当や通勤手当等は、たとえ職務が異なっても、同じ職場に通勤するという観点から、不合理な差があることは認められない、というような感じです。
【諸手当】
役職手当は、 役職者に対してその職責等への対償として支給する手当でしょうから、合理性が認められます。問題は、その他の手当ですね。住宅手当は、多くの裁判例によると、転居をともなう異動が予定されている労働者だけに支給する場合等を除き、契約社員にも支給を命じています。アルバイト等についてどのように判断するかは微妙ですが、長時間アルバイト等の賃金によって生活していて、実質的に契約社員と大差ないような実態がある場合は、 支給を命ぜられる可能性が高いものと考えています。
家族手当についても、基本的な考え方は変わらないと思われます。職務手当については、そもそも支給目的も不明確なので、正社員だけに支給することに合理性が認められることはないと考えられます。
【賞与、退職金】
賞与、退職金についても、基本的には手当の考え方と同様です。正社員だけに支払うことについて、合理性が認められるかどうかという問題です。
賞与は、利益の程度に応じてその都度定める額を支払われているようですから、労働の結果への対償として支払われているようです。ということは、契約社員やアルバイト等であっても、その貢献度等に応じて支払うのが合理的だと考えられます。賞与については、法律上最低賃金等の規定もありません。可能であれば、少額で構わないので全従業員に支払った方がよいかもしれません。
退職金は悩ましいですね。 最近の裁判例 (メトロコマース事件、 東京地裁平成 31 年 2月 20 日判決)は、部分的ではありますが、契約社員に対する退職金支払いを命じました。退職金については、功労報償的性質の他、賃金後払い的性質があるとされています。従って、勤続年数が一定以上の契約社員については、非常にリスクが高いと考えられます。アルバイト等については、個々の状況にもよりますが、勤続年数等に応じて支払わざるを得なくなる可能性はゼロではないと考えておく必要があるように思われます。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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