【難しい問題】
法律上は、義務教育就学年齢(中学生以下)の雇用は原則として禁止していますが、反対に高齢であることを理由として「雇用してはならない」というような規定はありません。「いつまで運転させて良いのか」という問いに対し、少なくとも法律上違法となることを理由として、いつまでだとする答えはありません。
元気なうちなら運転させて良いのかと言われると、元気で健康なら法律上ダメだという理由がないのですが、貴社が悩まれていますとおり、本当にそれで良いのかという問題があるわけです。
身体は元気で運転にも問題がないとしても、仕事は運転だけでなく物流なので、やりとり等も必要です。記憶力や判断力が求められるケースにおいても問題ない水準が求められます。何も問題がない場合でも、取引先等から見て、客観的に「大丈夫か?」という不安感を与える可能性が考えられます。本当に問題が無かったとしても、ある日突然大事故を起こす可能性もゼロではありません。若い人でも同様ではありますが、高齢ドライバーが事故を起こしたとなると、マスコミが過剰に報道する可能性も否定できません。人材確保が困難である結果のため、何とも言い難い面がありますが、高齢者ドライバーはあくまでも「当分の間」のつなぎのはずでした。それが長期化したとしても、人材確保の問題を先送りにしているに過ぎません。
これらはいずれも法律の基準で判断する事項ではなく、事業所による経営判断が求められる事項となります。
【雇用を前提に】
現行法は、定年は 60 歳以上とし、65 歳未満の定年を設けたときは定年後 65 歳までは本人の希望があれば継続雇用を義務づけています。そして、最近は、65 歳を超えて働ける社会を目指す流れがあり、近い将来において 70 歳までの雇用について努力義務を課す可能性が高まっています。最近、高齢ドライバーによる重大事故が注目されましたが、時代背景は高齢者雇用の促進だといえます。
しかしながら、反射神経等が年齢に従って衰えることは、やむを得ない事実です。貴社として検討いただきたい事項は、「上限」を設定することです。たとえば、上限年齢を 70 歳と設定し、仮に健康で元気で問題がない場合であっても、70 歳到達でドライバーを卒業してもらうということです。
貴社の実態としての問題点は、この先会社が「危ない」と感じたとしても、本人が「まだまだ若い者には負けん」と言っている場合、自動的に終わりとなる基準そのものが存在しないことなのです。70 歳を超えても雇用継続できる可能性が必要ならば、75歳でも構いません。とにかく、上限年齢を設定することが必要だと考えます。
少し細かい話しになりますが、65 歳までは雇用義務がありますが、現行法では 65歳以上の雇用義務はありません。人材確保の必要性があったとしても、ドライバー業務を任せられないような人も存在し得ます。即ち、65 歳以上の雇用については、あくまでも会社が認めた人に限られることを前提とし、本人の希望だけで自動的に雇用継続するような制度にしてはなりません。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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