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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《令和元年6月号》
人材確保のための65歳超の雇用継続
  質 問

【質問者】
 運送業(正社員 10 名、嘱託 5 名、アルバイト数名)

【質問内容】
当社は、運送業を営む株式会社です。仕事はあるのですが、運転する従業員が確保できません。どこも採用できないようで、募集時の給与水準も高くなってきておりますが、多少高くしてもなかなか応募がありません。人手不足の中、採用も難しい状況だというのに、やっと何とか採用できても短期間で退職してしまうことが珍しくありません。早くこのような状況から抜け出さないと、新しい仕事を引き受けることができないだけでなく、定期的な仕事すら対応できなくなる日が遠くないように感じております。
さて、当社の定年は 60 歳で、再雇用後の嘱託定年が 65 歳です。嘱託になっても、給与も労働時間も 60 歳前と同じです。そして実は、65 歳になっても人手不足であるため、当分の間はそのまま継続して運転してもらっているのです。65 歳を超えて雇用していること自体は、規定上問題かもしれませんが、背に腹は代えられないため、やむを得ないと考えております。ただ、採用が改善する兆しがなく、65 歳を過ぎて「当分の間」のはずが、ついに 1 名が 70 歳になってしまいました。問題に感じていることは、最近高齢者の事故がニュースになることも珍しくないため、果たしていつまで運転させて良いのかという点です。
本人が元気なうちは構わないように考えてはいるのですが…

  回 答

【難しい問題】
法律上は、義務教育就学年齢(中学生以下)の雇用は原則として禁止していますが、反対に高齢であることを理由として「雇用してはならない」というような規定はありません。「いつまで運転させて良いのか」という問いに対し、少なくとも法律上違法となることを理由として、いつまでだとする答えはありません。
元気なうちなら運転させて良いのかと言われると、元気で健康なら法律上ダメだという理由がないのですが、貴社が悩まれていますとおり、本当にそれで良いのかという問題があるわけです。 身体は元気で運転にも問題がないとしても、仕事は運転だけでなく物流なので、やりとり等も必要です。記憶力や判断力が求められるケースにおいても問題ない水準が求められます。何も問題がない場合でも、取引先等から見て、客観的に「大丈夫か?」という不安感を与える可能性が考えられます。本当に問題が無かったとしても、ある日突然大事故を起こす可能性もゼロではありません。若い人でも同様ではありますが、高齢ドライバーが事故を起こしたとなると、マスコミが過剰に報道する可能性も否定できません。人材確保が困難である結果のため、何とも言い難い面がありますが、高齢者ドライバーはあくまでも「当分の間」のつなぎのはずでした。それが長期化したとしても、人材確保の問題を先送りにしているに過ぎません。
これらはいずれも法律の基準で判断する事項ではなく、事業所による経営判断が求められる事項となります。

【雇用を前提に】
現行法は、定年は 60 歳以上とし、65 歳未満の定年を設けたときは定年後 65 歳までは本人の希望があれば継続雇用を義務づけています。そして、最近は、65 歳を超えて働ける社会を目指す流れがあり、近い将来において 70 歳までの雇用について努力義務を課す可能性が高まっています。最近、高齢ドライバーによる重大事故が注目されましたが、時代背景は高齢者雇用の促進だといえます。
しかしながら、反射神経等が年齢に従って衰えることは、やむを得ない事実です。貴社として検討いただきたい事項は、「上限」を設定することです。たとえば、上限年齢を 70 歳と設定し、仮に健康で元気で問題がない場合であっても、70 歳到達でドライバーを卒業してもらうということです。
貴社の実態としての問題点は、この先会社が「危ない」と感じたとしても、本人が「まだまだ若い者には負けん」と言っている場合、自動的に終わりとなる基準そのものが存在しないことなのです。70 歳を超えても雇用継続できる可能性が必要ならば、75歳でも構いません。とにかく、上限年齢を設定することが必要だと考えます。
少し細かい話しになりますが、65 歳までは雇用義務がありますが、現行法では 65歳以上の雇用義務はありません。人材確保の必要性があったとしても、ドライバー業務を任せられないような人も存在し得ます。即ち、65 歳以上の雇用については、あくまでも会社が認めた人に限られることを前提とし、本人の希望だけで自動的に雇用継続するような制度にしてはなりません。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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