【任意休暇】
日本は古くからお盆期間を休みとする習慣がありますが、法律上はお盆だからといって休みにする義務はありません。このため、貴社のように、お盆期間を営業する代わりに、夏季休暇のような休暇制度を設ける事業所も少なくありません。仮にお盆も出勤で、その他の夏季休暇等の制度がなかったとしても、法律上違法というわけではありません。あくまでも、これらは各事業所が任意で定めた休暇制度なのです。
法律上義務づけられる休暇制度を、まとめて法定休暇といいます。法定休暇には、年次有給休暇の他、産前産後休業、育児休業、介護休業や、裁判員になったときの公の職務の休暇等があります。法定休暇のうち、年次有給休暇だけが、その名称に「有給」とあるように、有給休暇とすることが義務づけられています。言い換えると、他の法定休暇は、休暇を与えることは義務づけられていますが、休暇を取得して休んだ日に給与を支払う義務まではなく、無給で良いことになっています。
ここで、任意の休暇について考えますと、法律上付与する義務がないわけですから、取得して休んだ日に給与を支払う義務も当然ありません。無給で構わないわけです。しかし、有給としても構わないのですが、有給とすることで年次有給休暇とは別の有給休暇制度となってしまうわけです。
貴社の場合、おそらく正社員は月給制で、これまで 3 日の夏休みについては年次有給休暇として取り扱わず、別個の有給休暇として、月給から賃金控除せずに支給していたものと思われます。そうであれば、貴社の夏休みは年次有給休暇とは別の有給休暇制度ですから、今年から年次有給休暇として取り扱うことは、別の有給休暇を無給に変更することを意味し、不利益変更に当たります。原則として、従業員の合意なく不利益変更はできないとされています。法律上、事業所の善意は、労働者の既得権になってしまいますので、何かと留意する必要があります。
【退職者】
退職者が残っている年次有給休暇をすべて消化する行為は、制度本来の趣旨に合致しないことは明らかです。これを当然の権利とする主張は、誤っていると考えます。しかし現行法上、如何ともし難いのが現実です。ここでせめてもの対応として考えられるのが、年休買取です。年休制度は、休みを与えることを求められているため、原則として買取ることは認められません。但し、退職時に限って、退職後は休みが取れなくなることから、買取ることも可能とされています。買取ることによって、退職日を年休残日数分延長する必要がなくなるため、余計な社会保険料負担の発生等を抑えられる可能性があります。法律上は買取りが想定されていませんから、買取り額についても規制はありません。一般に本人が年休を取得した場合の額を参考に決める例が多いと思いますが、これと異なっても問題はありません。
少し視点を変えまして、平成 31 年 4 月以降の退職者については、退職日が年休基準日の前か後かも要注意です。平成 31 年 4 月以降の年休基準日から 1 年間に、5 日の年休取得が義務づけられましたが、途中で退職する場合は 4 月から退職日までの間に 5日取得させなければならないのです。仮に買取るとしても、既に年休取得した日数と合わせて 5 日分は実際に年休取得させなければならないわけです。今後退職者が生じる都度、チェックを忘れないようお願い致します。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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