【原則】
始業時刻から終業時刻までの間は、休憩時間を除き、所定労働時間に該当します。
休憩時間とは、「完全に労働から解放された時間」とされ、所定労働時間が 6 時間を越えるときは 45 分以上、8 時間を越えるときは 60 分以上を、労働時間の途中に与えることが義務づけられています。
仮に始業時刻 8 時 30 分、終業時刻 18 時、休憩時間 12 時 30 分〜 14 時(90 分)だとします(所定労働時間 8 時間)。この場合、8 時 30 分〜 12 時 30 分と 14 時〜 18 時の所定労働時間中については、法律上従業員は職務に専念する義務を負います。従って、従業員の都合で勝手に休憩してはなりません。仮に事業所が休憩を認めるとすれば、その時間分は労働していないので、その分の給与を支払う義務もありません。
ここから難しい問題が絡んできます。トイレでなく、喫煙のために職場を度々 5 〜 10分離れる従業員がいるとすれば、場合によっては事業所として所定労働時間中の喫煙を禁止するという対抗手段が考えられます。しかし、さすがにトイレに行くことを禁止することはできません。では、トイレにいる時間分の給与の控除が認められるかというと、原則として難しいというのが労働法の世界の実態です。
【可能性】
本人は、「体質」だと言っていますが、ここを確認する必要があります。原因として、体質というよりも病気かもしれません。また、残念ながら、単なるサボりかもしれません。少なくとも他の職員は、「サボっているのに、院長は何も対応しない」と考えている可能性が高いように考えます。最近は、就業時間中にトイレにこもってスマホ操作する悪質な従業員もいるようです。まずは専門医の診断を受けさせることが必要です。仮に異常があれば、就労の可否や就労条件の確認も必要です。逆に異常がなければ、「治らない」ということを意味することになります。
別の視点から、診療所の場合は、就業時間中のスマホ操作等を禁止することも必要かと考えます。問題従業員は、「家族からの緊急連絡とかどうするのか」等と大騒ぎします。しかし、就業時間中の緊急連絡は、診療所あてにすれば問題ない話しです。
【退職勧奨】
仮に体質や病気であったとしても、他の職員に対する気遣いがないため人間関係を悪化させているわけです。その前に、就業時間中に長時間労働しない人材ですから、辞めて欲しいと考えられるのはやむを得ないと考えます。しかし残念ながら、トイレと偽ってサボっていたことが立証できて、しかも注意指導を繰り返しても改善しない場合等でない限り、解雇しても紛争になれば分が悪そうです。
本人の合意が必要ですが、退職勧奨する方法が現実的かと考えます。退職に合意しないのであれば、現実に持ち場を離れることが多く、労働力として支障があるわけですから、短時間勤務に変更することを打診する等も視野に入れておきたいです。労働法の前では、事業所の立場等が全く無視されるのため、悲しくなりますね…。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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