【団交応諾義務】
民間の人や事業所同士の協議や話し合い等は、個々の権限により応じるかどうかを決めることが保障されています。この原則に基づけば、労働者が話し合いを求めたとしても、これに応じる義務はないはずです。しかし、労働組合法が、労働組合に「特権」と言って過言でない水準の権利(反対に言えば、事業所にとって理不尽と言って過言でない水準の義務)を認めているため、この原則が通じません。団体交渉申し入れに対しては、原則として拒否できないのです。このことを、「団交応諾義務」といいます。
それだけではありません。団体交渉の場においては、「誠実団交義務」まで求められています。具体的には、相手の要求に対して、これを受け入れる義務はありませんが、受け入れない場合はその理由について誠実に説明するなどすることが求められているのです。
結論として、団体交渉申し入れに応じて団体交渉を開催し、要求事項について誠実に回答する必要があります。
【要求事項のヒント】
要求事項を端的に言うと、均等待遇や均衡待遇を求めるもののようです。いわゆる同一労働同一賃金的なものです。既に裁判例も次々出ておりますが、諸手当について正社員にだけしか支給しないというのが認められにくい背景があります。貴社の場合正社員の「基本給+職務手当」の額が、契約社員の基本給の額と同水準であれば、職務手当が基本給に含まれている旨説明することはできるかもしれません。住宅手当については、正社員だけ転居を伴う異動がある等の理由のがなければ厳しいです。家族手当も一定の要件を満たすかどうかで定めるべきであり、契約社員だから支給しないというだけではなかなか難しい時代になりました。賞与についても同様です…
しかし、これは裁判ではありません。貴社の将来を考えたとき、今後契約社員であっても諸手当について同様に支給した方がよいと考えるか、逆に諸手当を統廃合してシンプルな給与制度とする方がよいと考えるか、よく検討して交渉に臨むべきだと考えます。
【残業代】
労働時間の単位は、「時間」でなく「分」とされています。貴社の場合、確かに残業はなさそうですが、全くないわけではないと思われます。終業時刻を 10 分だけ超過すれば、この 10 分が時間外となってしまうわけです。労働組合の要求は、この部分である可能性が考えられます。ここは逆に、具体的な要求内容を確認の上、対応する必要があります。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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