【恐ろしいリスク】
詳細は分かりませんが、おそらく正社員と契約社員・パートの職務内容には、ほとんど相違がなさそうに感じられます。同一労働であれば、基本給、諸手当、賞与、退職金等の待遇は、原則として同じにしなければなりません(均等待遇)。仮に職務内容に相違があるとしても、その具体的な相違に応じた待遇が求められます(均衡待遇)。
仮に正社員の職務が 10 として、契約社員が 8、パートが 5 であれば、10 対 8 対 5 の比率の待遇にしなければならないような感じです。10 対 0 は、認められません。
貴社がこのまま何ら対策せず、将来突然訴えられたりした場合、現在正社員に支給している諸手当、賞与、退職金等のすべての差額を支払わせられるリスクがあります。
しかも令和 2 年以降は時効 3 年、将来は時効 5 年となりますから、3 年分、5 年分の差額となれば経営危機といっても過言でないと思われます。
【理想と現実】
理想は、諸手当や賞与、退職金まで、契約社員やパートにも所定労働時間数にあわせて引き上げることです。しかし、これができれば、何も悩みはないわけです。しかし、残念ながら正社員への支給を抑制し、抑制した原資を充てるのが現実的だと思われます。
諸手当の具体的な支給基準が分かりませんが、役職手当だけは、会社が役職に任命することが支給基準でしょうから、そのままで良さそうに思われます。通勤手当については、上限額を揃えれば良いでしょう。パート等で所定労働日数が少ない者を想定すれば、日額上限も設定しておくと良いでしょう。家族手当は、実際に扶養していることを支給基準とすれば、ほとんどの場合パートは支給対象外になると思われます。
問題は、職務手当、物価手当、食事手当、住宅手当です。職務に明確な相違がなく、転居を伴う異動もないわけですから、契約社員やパートに対し、同一の支給、少なくとも均衡のとれた支給が求められることになります。ということは、支給原資の問題から、これら手当は、廃止方向で検討するのが現実的でしょう。
【厄介な「基本給連動型」】
廃止した手当の相当額は、そのまま基本給に上乗せして応急措置完了、ということろです。しかし、ここで基本給と賞与や退職金が連動するという大問題が浮上します。
結局、賞与制度や退職金制度まで改定しなければ、同一労働同一賃金への本当の対策が完了しないのです。今後は、契約社員やパートへの賞与や退職金支給の問題があるため、縮小制度を構築せざるを得ませんし、その際、基本給との連動を絶ち切る必要があります。賞与については、1 カ月分支給する等の規定を置いていない限り、その都度の評価に基づき個別に支給額を定める方式に変更すれば良さそうです。
問題は、退職金です。いったん現行制度を停止し、新制度を検討するのが現実的な対応法になるかと考えます。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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