【平均賃金】
平均賃金は、労働基準法第 12 条に規定される賃金計算方法です。休業手当の計算の他、解雇予告手当、労災休業補償給付等において、用いられる計算方法です。
労災休業補償給付は、60 日間就労不能であれば、4 日目から 57 日分補償されます(支給率は最終的に 8 割)。所定労働日か所定休日か問わず、60 日を基準に考えます。解雇予告手当も、よく「給与 1 カ月分」とか言われますが、厳密にいうと「平均賃金 30日分」が基準とされています。このように、月給制の人の平均賃金 30 日分が、概ね月給相当額であれば、ちょうど良い感じになるように設定されています。
【平均賃金の計算】
さて月給の方の平均賃金 1 日分の計算は、直近賃金締切日から遡って【直近 3 カ月の総支給(諸手当、通勤手当、残業代等含む)÷その 3 カ月の総日数】です。「総日数」は、3 月は 31 日、2 月は 29 日、1 月は 31 日で、91 日となります。仮に毎月ちょっきり 30 万円だったとすれば、30 万円× 3 カ月÷ 91 日= 9,890 円となります。30 日分で約 29.7 万円で、ほぼ 1 カ月分です。
貴社の正社員の所定労働日数は、何日でしょうか。仮に、月 20 日勤務だとします。1カ月 20 日休業させた場合、20 日分の休業手当を支払うことになります。30 日分ではなく、20 日分です。先ほどの例だと、約 19.8 万円となります。ほぼ 1 カ月の 3 分の 2ですね。そして、平均賃金の 6 割ですから、さらに 0.6 をかけた約 11.9 万円が、休業手当となるわけです。通常の月給の半分にも及びません。
時給の場合も、計算式は月給の場合と同じです。仮に、常に 1 日 5 時間、時給 1000円、月 10 日労働だったとすれば、月 5 万円× 3 カ月÷ 91 日= 1,648 円です。ただ、最低保障額があります。3 カ月間の実際の出勤日数から、1 日あたりの額の 6 割です。つまり、15 万円÷ 30 日× 0.6 = 3000 円が最低保障額で、この額が平均賃金 1 日分となります。この時点で、1 日 5 時間×時給 1000 円の 6 割になりましたが、ここから 0.6をかけた 1800 円が平均賃金の 6 割となります。通常通り働いた場合と比べると、36%しかありません。
【事前説明の重要性】
以上、基本となる平均賃金計算を示しました。「6 割」といっても、実質的には 4 割前後になったりします。逆に、直近 3 カ月間に異常に残業代が多かったり、莫大な歩合給が支給されていたりすると、6 割どころか通常賃金を上回ることもあり得ます。平均賃金は、矛盾に満ちているのです。
ここで考えられるリスクは、6 割と聞いてあてにしていた従業員が、実際の額を知って不信感を抱くかもしれないことです。飲食業の場合、本来は支払わないで良い可能性が高いところ、せっかく支払ったのに恨まれてはたまりません。あらかじめ、平均賃金について説明しておくことが重要だったと思われます。もし当初の「半分ちょっと」 の意思がおありでしたら、通常の賃金の 6 割を支給することもご検討ください。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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