【確たる回答はない】
労働法は、一方的に労働者を保護する法律です。当然に、経営者が「こうすれば法律的に問題なくリストラできる」のような条文は、全く存在しません。ご質問に対する確たる回答は、残念ながら存在しないわけです。結局は、裁判をやってみないとわからないという話になります。
ただ、過去の裁判において、ある程度の目安は示されています。即ち、「法的に認められる可能性を高める対応」を少しでも多く実施することが、現在取るべき対応ということになります。
【4要件】
経営不振等の理由により人員削減を目的とする解雇のことを、整理解雇といいます。
整理解雇は、多くの裁判例から、次の 4 つの視点から判断される傾向があります。
@ 人員削減の必要性
A 解雇回避の努力
B 解雇対象者の選定方法
C 労働者への説明、協議等の状況
まず@ですが、詳細は分かりませんが、お話の内容から、人員削減の必要性がある
ことを前提とします。
次のAが重要です。解雇した後の裁判で、「いかに解雇を回避しようと努力したか」が大きく問われるわけです。裁判所は、あくまでも解雇は最終手段と考えていて、「他の手段を尽くしてもなお、解雇せざるを得なかった」でなければなかなか認めないようです。事業所によっては、他の手段を尽くす期間の賃金負担のため、再起困難に陥ることだってあり得るはずです。それでも、何もせずいきなり解雇してしまうと、後日紛争になった際はかなり厳しい状況になると思われます。
解雇回避の努力として、よくある手段に賃金カットがあります。しかし、賃金カットは、一般的に 1 割程度が精一杯といわれていますので、貴社の場合、これだけでは厳しそうです。仮に賞与の比率が高ければ、これまでの慣行や賃金規程にもよりますが、賞与は大幅なカットも可能だと思われます。賃金カットでは目的達成できないときは、人員削減せざるを得ないわけですが、ここでいきなり解雇するのではなく、希望退職者募集や退職勧奨等で対応しなければならないのです。それでも目的達成できない場合に、はじめて解雇に踏み切るかどうかという流れになるわけです。
解雇対象者の選定(B)として、まずは非正規からというのは、ある種の常識のように言われています。しかし、働き方改革の時代にあって、正規と非正規の差別的取扱いを問題視する時代に入ってきていますから、過去の裁判例をそのまま信じて良いかどうか微妙な面もあります。また、正社員であっても誰を選ぶかというようなときに、日頃から評価を記録して残しておくと大いに役立ちます。
最後のCも重要です。説明等をする際には、絶対に虚偽が含まれる内容であってはなりません。
【準備期間の重要性】
以上のような対応をするため、それなりの準備期間が必要になります。ギリギリまで何もせず、いきなり解雇するのが最悪の例です。貴社の現状から、もう少し様子を見るよりも、何らかの対応を 1 つでも始めた方が良いように考えます。まずは、会社の現状を従業員に説明することから始めても良いかもしれません。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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