【試用期間】
試用期間とは、試みの使用期間として、一般に特に問題なければそのまま雇用するが、最低限必要な水準に達しないと評価されるときは試用期間中又は試用期間満了をもって解雇する可能性がある期間のことをいいます。解雇権留保特約付き労働契約ともいわれます。
一般に、よく「試用期間満了をもって退職とし、本採用しない」のような言い方をします。最初から雇用期間を定めている場合は、「雇用期間満了をもって終了し、更新しない」わけですが、これは最初から雇用契約が終了する日が特定されているので、雇止めといいます。試用期間の場合は、異なります。雇用期間の定めがなければ通常は定年までの雇用契約で、その最初の数カ月を試用期間として設定している契約です。つまり、雇用期間の途中で退職させるわけですから、どうしても解雇に該当してしまいます。
【雇用機会均等法】
雇用機会均等法第 9 条第 3 項(抄)及び第 4 項の条文を確認します。第 3 項(抄):事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと(中略)を理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
第 4 項前段:妊娠中の女性労働者および出産後 1 年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。
第 4 項但書:ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。
貴社はおそらく、以上の条文を調べられたのだと思います。確かに、第 3 項と第 4項前段では、試用期間満了をもって退職してもらうことができないようです。しかし、第 4 項には、続きに但書があります。妊娠したことを「理由として」解雇すると無効とされますが、他の理由で解雇したことを証明できる場合は、解雇は可能というわけです。
【現実問題】
貴社の場合、お聞きしている限り妊娠したことを理由とする解雇ではありません。従って、試用期間満了をもって退職してもらうことが可能なはずです。問題は、「証明」できるかという点です。
ご承知のとおり、そもそも日本の労働法は、解雇に関するハードルが異常に高く、そう簡単に解雇が認められません。試用期間中の解雇ハードルは、通常より若干低いかもしれませんが、それでも簡単に認められるという話しではありません。この高いハードルを越える解雇理由があって、しかもそのことを客観的に証明できてはじめて、試用期間満了にて退職させることが可能となります。
お聞きしている限り「能力不足」のようですが、このことを第三者に証明するためには、客観性の高い資料等も必要になります。このあたりが、現実問題として悩ましい第二のハードルとなります。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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