【皆勤手当】
皆勤手当は、法律上支給する義務がない手当です。従って、支給する場合は、事業所がその支給ルール等を定めることになります。
貴社の皆勤手当のルールは、年次有給休暇を取得した場合も影響がある点において、特色があります。年休取得によって皆勤手当を減額することは違法だという専門家がいますが、そのような根拠はありません。
判断基準として、その皆勤手当の減額が大きく、実質的に年休取得を抑制阻害するものであれば違法とされますが、貴社のように 5,000 円程度であれば許容範囲だと解します。最高裁も、年休取得によって皆勤手当が減額された事案につき、その減額幅が賃金の約 2 %に過ぎないことから、これを合法と認めています(沼津交通事件、最高裁平成 5.6.25 判決)。
【台風接近日の休業】
台風接近を理由として休んだ場合で、皆勤手当を支払わなければならないとすれば、それは「事業所の責めに帰すべき事由」により休んだ場合となります。今回は、2 名を除く全員が現に出勤しているわけであって、間違いなく「事業所の責めに帰すべき休業」にはあたりません。
仮に、当日出勤可能な従業員がいるとしても、事業所が一方的に休業を命じれば、事業所の責めに帰すべき事由による休業と取り扱われます。このケースに該当する場合は、休業手当支払い義務が生じるため、欠勤でもなく年休取得にもなりませんから、皆勤手当は支給しなければならないことになります。
【均衡待遇】
ところで貴社には、パート・アルバイトが 10 名在籍するようです。皆勤手当は、パート・アルバイトについては支給対象外としているのではないでしょうか。
もしそうであれば、別の問題を意識する必要があります。「均衡待遇」です。均衡待遇とは、職務の内容が異なる場合において、その相違に応じて均衡な待遇を義務づけるものです。皆勤手当は、そもそも職務内容と無関係の手当です。即ち、正社員に対してのみ皆勤手当を支給し、パート・アルバイトにしないという取扱いについて、合理的な説明のしようがありません。既に最高裁も、有期雇用者に対して皆勤手当を支給しないことについて、違法だと判断しています(ハマキョウレックス事件、平成30.6.1 判決)。
貴社は、今後はパート・アルバイトも支給対象とするか、いっそ皆勤手当を廃止するか、いずれかの方向で賃金制度の検討が必要だと思われます。なお、支給する場合の皆勤手当の額は、所定労働時間等に応じた差があっても構いません。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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