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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《令和2年12月号》
年俸契約と確定賞与
  質 問

【質問者】
 医療機関(年俸医師 5 名、正職員 40 名、パート・アルバイト 60 名)

【質問内容】
 当院は、医療法人です。医師の雇用については、原則として年俸で契約し、1 年毎に契約更改しています。年俸額は個々に異なりますが、定まった年俸の支払い方も個々に異なります。主に、次の 3 パターンです。  @年俸÷ 12 を毎月支給
 A年俸÷ 14 を毎月支給し、7 月と 12 月に各 1 ずつ支給
 B年俸÷ 16 を毎月支給し、7 月と 12 月に各 2 ずつ支給
 昨年 10 月より上記Bで雇用契約し、今年 7 月に 10 月から同条件で更改契約した医師がいます。この医師が、10 月になって 12 月末で退職を申し出てきました。具体的な契約金額は、年俸 1600 万円です。毎月 100 万円、7 月と 12 月に別途各 200 万円を支払うという内容です。更改契約は、令和 2 年 10 月 1 日から 1 年間で、年俸 1600 万円です。
 12 月末で退職するということは、10 月〜 12 月の 3 カ月、年間の 4 分の 1 だけの勤務です。年俸ですから、1600 万円の 4 分の 1 にあたる 400 万円を支給すれば十分のように思います。しかし、このままいけば、10 月〜 12 月の毎月 100 万円に加え、12 月に 200 万円を支給すれば、3 カ月で 500 万円も支払うことになってしまいます。 このような場合は、12 月の 200 万円を 100 万円の支給とし、3 カ月間で合計 400 万円を支払えば問題ないと考えるのですが、いかがでしょうか。もし 200 万円を支給しなければならない場合は、年間契約の途中で自己都合退職するのだから、違約金の支払いを求めても良いでしょうか。

  回 答

【年俸】
 勤務医との契約は、雇用契約でなく委任契約で行われることもあります。その上で、実態も委任であれば、労働法は適用されません。しかし、貴院のご質問から、雇用契約を締結されているようなので、雇用契約であることを前提として回答致します。今回の争点は、年俸の一部を 7 月と 12 月に支払うこととしている点です。ご質問の内容から、雇用契約書において 7 月と 12 月に各 200 万円を支給すると明示されているようです。当然、途中退職を想定せず契約したものと思われますが、12 月に毎月 100万円の他に 200 万円支払うと明確に契約している以上、支払わざるを得ません。契約書には、「但し、途中退職の場合は…」のような定めはありませんか。もしこのような定めがあって、その内容が、たとえば 12 月の別途支給分について「在籍期間に応じた額を支給する」と記載してあれば、年俸額に対する在籍期間相当額(今回の場合 100 万円)の支払いで良いことになります。

【年俸契約の工夫】
   年俸制ですから、貴院の@のように単純に 12 分割で支給すれば、このような問題は生じませんでした。どうしても夏と冬の賞与のような支給が必要であれば、万一途中退職の場合の取扱いを定めておくべきです。
 万一を言い出すとキリがないのですが、退職しない場合でも、本人が病気等をして一定期間就労不能になる可能性だってゼロではありません。年俸契約であっても、それは年間の所定労働日のすべて就労することを前提として定めた額ですから、欠勤したときは控除できることを雇用契約書に明示しておきたいところです。  またキリがありませんが、欠勤しなかったとしても、期待とはほど遠い仕事ぶりだった場合はどうしましょうか。契約時に交渉可能であれば、年俸は確定額とせず、想定額とする方法が考えられます。想定 1600 万円、毎月 100 万円、夏と冬に勤務査定の結果として、その都度定める額を支給するという方法が考えられます。その都度定めるといっても、想定額は各 200 万円です。あとは勤務査定により変動させるわけです。

【違約金】
 違約金は、あらかじめその額を定めておく必要がありますが、そもそも労働法では  違約金を定めること自体が禁じられています。従って、違約金を求めることはできまん。
しかし、実際に被った損害賠償を請求することは認められます。ただ、認められてはいるのですが、実際に被った損害額を立証することが難しすぎて現実的でないという問題があります。労働契約ですから、途中退職は想定内とされ、次の医師の採用のための経費等は損害と認められません。たとえば、当該医師が希望するために、当該医師しか使用できないような特別な機械を購入した場合など、損害が認められる可能性があるケースは珍しいのです。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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