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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《令和3年1月号》
祝日の変更と1年単位の変形労働時間制
  質 問

【質問者】
 製造業(正社員 50 名、パート・アルバイト 30 名)

【質問内容】
 当社は、製造業を営む株式会社です。毎年 1 月 1 日を起算日とする 1 年単位の変形労働時間制で労働時間の運用を行っています。休日は、すべての日曜日と祝日、そして土曜日のうちその年その年で異なる指定した日としています。例年、11 月には翌年 1年分の所定労働日を決定して勤務カレンダーを作成し、従業員代表者と協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届出します。そして今年も、令和 3 年 1 月から 12 月までの協定を締結し、1 年分の勤務カレンダーを添付して 11 月 28 日に届出を完了致しました。
 ところが、12 月に入ってから、令和 3 年の祝日が変更になると発表されました。7月 19 日の海の日は 7 月 22 日に、8 月 11 日の山の日は 8 月 8 日に、10 月 11 日のスポーツの日は 7 月 23 日に移動するそうです。既述の通り、当社は祝日は休みですから、休日が変更になります。しかし、既に労働基準監督署には、届出してしまいました。
 休日が協定届の勤務カレンダーと少し異なることになりますが、このまま変更後の祝日を休日とし、変更前の祝日は出勤させて問題ないでしょうか。

  回 答

【1年単位の変形労働時間制】
 法定労働時間の大原則は、「1 週間につき 40 時間」及び「1 日につき 8 時間」を越えて労働させてはならないというものです。しかし、1 日、1 カ月及び 1 年のそれぞれについて、時間外労働をさせることができる上限時間数を定めた時間外休日労働協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出ることにより、法定労働時間を越えて労働させることができることになります。但し、法定時間外労働という位置づけになり、少なくとも 2 割 5 分割増の賃金を支払うことが義務づけられています。
 ところで、事業所によっては、時期によって繁閑の差が大きく、たとえば、週 32 時間で十分な週がある反面、週 48 時間は必要な週があるようなケースも存在します。平均すれば週 40 時間なのですが、このような場合でも、週 48 時間のうち 40 時間を越える 8 時間分については、法定時間外労働として取り扱うことが原則となってしまいます。ここで、法は例外として、「1 年単位の変形労働時間制」等を定めています。簡単に言えば、1 年以内の期間を平均して週 40 時間以下とすることを条件として、特定の週について 40 時間を越え、また特定の日について 8 時間を越える「所定労働時間」を定めることができる制度です。
 ただ、その活用のためには、やや厳しい条件が課されています。詳細は割愛しますが、あらかじめ定めた勤務カレンダーについては、途中で変更することができないとされています。即ち、祝日が変更されたとしても、届け出た勤務カレンダーにおける休日(元々の祝日)に勤務させれば、休日労働となってしまうということです。
 もっとも、休日労働として賃金を支払うのであれば、協定届に添付したカレンダーの通りに勤務させなかったことについて、問題になることもありません。

【再協定】
   休日労働扱いとすればすむとはいえ、釈然としませんね。そこで、祝日法改正後の勤務カレンダーを作成し、再度協定を締結して再度所轄労働基準監督署長に届け出ることが考えられます。ちょっと面倒ですが、こうすれば移動前の元々の祝日(平日)に出勤させても、休日労働として取り扱う必要はなくなります。
 執筆時点(令和 3 年 12 月 16 日)において、厚労省から取扱いに関する通達等もないようで、労働基準監督署の職員も対応・取扱い等について明確な回答ができず、従来の考え方を基礎に再度届出することを求めているようです。
 では、1 年変形期間の始期が 10 月 1 日の事業所はどうすれば良いでしょうか。令和 3年 9 月 30 日までの勤務カレンダーを添付していた場合は、スポーツの日が 10 月から 7月に移動するため、休日が 1 日増えるか、又は他に 1 日勤務日を設けるか、いずれかの対応が考えられるわけです。ただ、法律上は遡って再協定することができません。しかし、中途半端な期間で協定することも実務上支障があります。祝日法改正というやむを得ない事情があるので、やはり 10 月 1 日からの再協定を「遅延」して届けるということになるでしょうか。この件は、今後何らかの通達が発される可能性も考えられます。

【決定時期…】
 令和 3 年の祝日の移動は、東京オリンピックを見込んだものです。コロナ禍にあって、政府も難しい対応を迫られているとは思いますが、決定の時期が非常にまずかったように思います。特に、令和 3 年の一般カレンダーや手帳は既に販売済みで、令和 3年は特に 10 月 11 日(祝日⇒平日)はちょっと混乱するかもしれませんね。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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