【通勤手当】
法律上は、賞与や退職金と同様に、通勤手当を支給する義務はありません。従って、賞与や退職金と同様に、通勤手当を支給するのであれば、その支給基準等は各事業所が就業規則に規定を定め、その規定に遵って運用することになります。
遡って返還させることができるかどうかは、貴社の通勤手当に関する規定次第ということです。規定に「遡って返還させる」等と定めているかどうかではなく、従業員が受給した通勤手当が、規定上支給すべきものであったかどうかという点が返還させることができるかどうかの分かれ目となります。不当に受給していたのであれば、遡って返還させることが可能となります。
【通勤区分の判断基準】
貴社の場合、@公共交通機関、Aマイカー、B自転車、の 3 区分ですが、例えば「雨の日だけバス、その他は自転車」である場合、どの区分になるのでしょうか。規定で「1 日でも公共交通機関を利用して通勤する者」と定めていれば@になりますし、「主たる通勤方法」と定めていればBになります。一般にはBになるような規定の仕方をしているのではないでしょうか。そうであれば、遡って返還させることができます。片道だけ配偶者に送ってもらっている人の場合、どう考えたら良いでしょうか。行きと帰りで通勤方法が異なるわけですが、いずれも「主たる」通勤方法と解釈することもできるかもしれません。しかし、これで 1 カ月定期券代を支給することは、極めて不当ですね。ということは、規定の仕方もよく検討するべきだということになるわけです。おそらく貴社の考え方としては、このような場合は片道分の「実費」ということではないでしょうか。
貴社の通勤区分@は、1 カ月定期券代を支給することとしていることからも、その根底には、「1 カ月間、毎日公共交通機関を利用して通勤する者」を対象とする考え方があるのではないでしょうか。もしそうであれば、規定も「主たる」ではなく、「毎日」とすべきなのかもしれません。
【不正受給】
実は通勤手当は、従業員による不正受給が頻発する手当です。規定の仕方によるのでしょうが、本来支給すべきでない通勤手当を支給していながら、事業所側が日頃あまり気に掛けず放置しているケースも少なくありません。しかし、貴社のお考えのとおり通勤手当は本来「実費支弁」を目的とすべきものであって、従業員が負担する実費を超えて支払うべきものではないと考えます。
不正の多くは、実際と異なる通勤経路および方法の申請で、不要な乗り換えを絡めたパターンが目立ちます。通勤方法等は従業員の自由ですが、通勤手当はこれと一致させる必要はありません。事業所としては、「最も経済的」な方法をもって通勤手当額と設定すべきところでしょう。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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