【労働条件明示義務】
労働者の雇入に際して、事業所は法が定める項目の労働条件について、書面明示して交付する義務があります。必ずしも「雇用契約書」とする必用はありません。厚労省のモデル書式も「労働条件通知書」とされています。
対象となる「労働者」の範囲は、正社員に限られるものではありませんから、パートやアルバイトも対象となります。記載すべき労働条件は、次のとおりです。
@契約期間の有無(有期の場合は更新の取扱いを含む。)
A就業の場所、従事すべき業務
B始業及び終業時刻、休憩時間
C所定労働時間を越える労働の有無
D休日
E休暇(年次有給休暇、その他の休暇等)
F賃金(諸手当を含む。時間外の割増率、昇給の有無等を含む。)
G賞与、退職金等
H退職に関する事項(解雇事由を含む。)
I雇用管理相談窓口の職氏名(正規雇用は不要)
J適用される保険、適用される就業規則の名称等
Iは法定事項ではありませんが、実質的に記載すべき事項です。
労働契約という「契約」ですから、「雇ってから決める」という方法は許されません。世間では、個々に異なる労働契約なのに、ひな形を用いて適当に対応することで、後日労働紛争が生じた際に痛い目に遭う事業所も少なくないのが現実です。最低でも上記事項について定めなければ、雇用契約書は作成できないということを意味します。
【学生の注意事項】
学生の場合、「学生だからといって、基本的に一般労働者と何ら変わらない」ということが最大の注意事項だと思います。厳密にいえば、学生(夜間学生、通信学生を除く。)は雇用保険被保険者にならないことが異なります。貴社もそのようですが、一般に学生アルバイトは個々に労働条件が異なるため、正社員と比較して、むしろ雇用契約書等を作成することが極めて繁雑になるのが一般的です。
まず@は、期間を定める方が望ましいです。能力不足や人員調整等への対応を可能とするためです。更新は可能とし、上限は卒業予定時期とあわせて明示するといいでしょう。Aは、最後に「付随する業務、その他会社が指示する業務」等と付け加えるといいでしょう。
難しいのがBDの記載ですね。契約に応じて記載しますが、働き始めてからどんどん変わったりしがちです。それでも「週 2 〜 3 日」等の記載はよくありません。年休付与日数が定まりませんし、保険加入有無の判定も困難です。また、実際には週 1 日や週 4 日となる週が生じたりするかもしれません。テクニックとしては、「月 14 日以下」等と記載する方法があります。
昇給、賞与、退職金の有無も、きちんと記載しておく必要があります。そして忘れてはならないのが、就業規則が適用されることを明示することです。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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