【育児休業申出の合法的な取り下げ】
父親の場合、育児休業は、原則として出産予定日又は出産日から子が満 1 歳に達する日までの期間について取得できます。1 歳到達時に保育所に入所できない等の事情があるときは、さらに 1 歳 6 カ月まで、同様にさらに最長 2 歳まで取得できる可能性もあります。そして、法律上、育児休業取得の申出は拒むことができません。従って、「合法的に育児休業を思いとどまらせること」は、本人の自由意思で気が変わるとか、最悪の場合は流産とか、そのようなことでしか実現できないという回答になります。
【取得希望の内容の確認】
ところで、既述の育児休業の期間(1 歳まで、1 歳 6 カ月まで、2 歳まで)は、あくまでも最長限度の期間です。逆に最短期間はというと、1 日単位となります。育児休業だからといって、必ずしも「1 歳まで」とは限らないわけです。実際、厚生労働省の調査(雇用均等基本調査、対象平成 30 年度)によると、男性の育児休業取得者が実際に取得した期間について、@ 5 日未満 36.3 %、A 5 日以上 2 週間未満 35.1 %、B 2週間以上 1 カ月未満 9.6 %で、全体の 81 %が 1 カ月未満となっています。逆に 1 年以上取得したケースはわずか 1.8 %で、ほとんどが大企業の話しだと思われます。
伺ったお話では、対象の男性従業員は、「子供が生まれたら育児休業を取らせて欲しい」と言われたようですね。少なくとも「1 歳まで」等とは言われていません。社長が感じられたように 2 〜 3 日かもしれませんし、1 週間くらいかもしれません。まずは本人に育児休業の希望期間を確認されて下さい。
なお、育児休業開始予定日の 1 カ月前までに、本人は育児休業開始予定日と終了予定日を明らかにして、貴社に対して取得申請するのが正式な手続です。
【産後パパ育休】
令和 4 年 10 月より、出生時育児休業制度が創設されます。これは産後 8 週間(出産した女性は産後休業期間)に、父親等が最長 4 週間取得できる休業制度です。
従来の育児休業制度にて、実は産後 8 週間のすべて育児休業可能でした。わざわざ新たに創設された理由として、出生時育児休業制度には従来なかった次の相違点があります。
@ 2 回分割で取得できること
A休業期間中に最大半分まで就業させることができること(要労使協定)
「産後パパ育休」とネーミングされるとおり、休業期間中も必要に応じて就業することを可能とすることで、育児休業を取得しやすくなっています。
対象従業員の希望期間が、出産後 8 週間以内で 4 週間以内の期間であれば、10 月以降ならこの制度を意識することが考えられます。休業期間中にどうしても就業してもらう必要がある日がある場合等は、本人とよく話し合うと良いでしょう。
今後、他の従業員もお子さんが生まれる可能性が考えられます。時代の流れと法改正を意識し、今後は従業員定着や円滑な採用等を視野に、男性育児休業を「とらせない」から「活用する」という感覚が必要なのかもしれません。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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