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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《令和4年3月号》
男性の育児休業取得と産後パパ育休
  質 問

【質問者】
建設業(正社員 5 名)

【質問内容】
当社は、建設業を営む株式会社です。私の妻が取締役として経理事務等を担当していますが、従業員はすべて男性です。従業員は年配の者が多いのですが、30 代が 1 名在籍します。40 代も当社では「若手」で、1 名在籍しています。この 2 名、最近まで独身だったのですが、相次いで結婚しました。30 代の社員にいたっては、早くも奥さんが妊娠し、数カ月後には出産の予定です。そして、このことに触発されたのかどうか、50 代の独身の従業員まで積極的に結婚相手を探し始めたようです。社内の雰囲気もよく、とてもめでたい状況だといえると思います。
ここで心配なのが、育児休業制度です。その 30 代の社員が、子供が生まれたら育児休業を取らせて欲しいと言ってきたのです。当社は男性ばかりですし、過去に育児休業の取得実績はありません。育児休業という言葉は聞いたことがありますが、内容は全く知りません。そのため、30 代の社員の申出を「出産に立ち会いたいから、休みが欲しい」という意味のように受け取りました。そして、長くて 2 〜 3 日だろうという感覚で「わかった。ゆっくり休んでいいよ。」と言ってしまいました。
その後、「育児休業」って言ったなと思い、ネットで調べて驚きました。子供が 1 歳になるまで休みなんですね。しかし、当社は従業員 5 名だけで、1 人でも長期休業となると、その影響ははかりしれないのです。なんとか合法的に育児休業を思いとどまらせることはできないでしょうか。

  回 答

【育児休業申出の合法的な取り下げ】
父親の場合、育児休業は、原則として出産予定日又は出産日から子が満 1 歳に達する日までの期間について取得できます。1 歳到達時に保育所に入所できない等の事情があるときは、さらに 1 歳 6 カ月まで、同様にさらに最長 2 歳まで取得できる可能性もあります。そして、法律上、育児休業取得の申出は拒むことができません。従って、「合法的に育児休業を思いとどまらせること」は、本人の自由意思で気が変わるとか、最悪の場合は流産とか、そのようなことでしか実現できないという回答になります。

【取得希望の内容の確認】
ところで、既述の育児休業の期間(1 歳まで、1 歳 6 カ月まで、2 歳まで)は、あくまでも最長限度の期間です。逆に最短期間はというと、1 日単位となります。育児休業だからといって、必ずしも「1 歳まで」とは限らないわけです。実際、厚生労働省の調査(雇用均等基本調査、対象平成 30 年度)によると、男性の育児休業取得者が実際に取得した期間について、@ 5 日未満 36.3 %、A 5 日以上 2 週間未満 35.1 %、B 2週間以上 1 カ月未満 9.6 %で、全体の 81 %が 1 カ月未満となっています。逆に 1 年以上取得したケースはわずか 1.8 %で、ほとんどが大企業の話しだと思われます。
伺ったお話では、対象の男性従業員は、「子供が生まれたら育児休業を取らせて欲しい」と言われたようですね。少なくとも「1 歳まで」等とは言われていません。社長が感じられたように 2 〜 3 日かもしれませんし、1 週間くらいかもしれません。まずは本人に育児休業の希望期間を確認されて下さい。
なお、育児休業開始予定日の 1 カ月前までに、本人は育児休業開始予定日と終了予定日を明らかにして、貴社に対して取得申請するのが正式な手続です。

【産後パパ育休】
令和 4 年 10 月より、出生時育児休業制度が創設されます。これは産後 8 週間(出産した女性は産後休業期間)に、父親等が最長 4 週間取得できる休業制度です。
従来の育児休業制度にて、実は産後 8 週間のすべて育児休業可能でした。わざわざ新たに創設された理由として、出生時育児休業制度には従来なかった次の相違点があります。
@ 2 回分割で取得できること
A休業期間中に最大半分まで就業させることができること(要労使協定)
「産後パパ育休」とネーミングされるとおり、休業期間中も必要に応じて就業することを可能とすることで、育児休業を取得しやすくなっています。
対象従業員の希望期間が、出産後 8 週間以内で 4 週間以内の期間であれば、10 月以降ならこの制度を意識することが考えられます。休業期間中にどうしても就業してもらう必要がある日がある場合等は、本人とよく話し合うと良いでしょう。
今後、他の従業員もお子さんが生まれる可能性が考えられます。時代の流れと法改正を意識し、今後は従業員定着や円滑な採用等を視野に、男性育児休業を「とらせない」から「活用する」という感覚が必要なのかもしれません。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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