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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《令和4年4月号》
直行直帰の許可取消と改正道路交通法
  質 問

【質問者】
販売業(正社員 48 名)

【質問内容】
【質問内容】 当社は、販売業を営む株式会社です。従業員の多くは販売営業職で、主に取引先等を訪問する業務や新規開拓のための業務を担当しています。移動手段として、自動車を用いるケースが多く、当社は現在 15 台の自動車を有しています。
販売営業を担当する従業員毎に、日々の業務スタイルはバラバラです。大きく分けると、@朝出かけたら、夕方まで会社に戻ってこない者、A朝出かけて昼頃戻り、また午後出かけて夕方戻ってくる者、B取引先等との約束に合わせて出たり入ったりする者、C直行して午前中又は午後に会社に戻ってくる者、D午前中又は午後から出かけて直帰する者、E直行して直帰する者、の 6 パターンです。
もともと当社は、直行直帰は禁止していました。しかし、訪問先によっては会社に戻るために時間がかかり、しかも労働時間になってしまいます。そこで、訪問先と自宅の場所を考慮して、直行又は直帰することで大幅に労働時間が削減される場合に限って事前許可することとしました。就業規則にも同様に規定しています。
ところがふと気付くと、直行・直帰を認めるケースが激増してきました。特に当社が問題視しているのが、上記Eです。確かに会社に出社せず直行し、会社に戻らず直帰した方が合理的なケースしか許可していませんが、終日全く出勤しないということに抵抗があります。そこで、同日の直行及び直帰については、合理的であるかどうかではなく、遠方への出張等、出勤することが不可能な日に限って認めるようにしたいと考えているのです。これは、不利益変更にあたるでしょうか。
ところで道路交通法が改正され、白ナンバー 5 台以上を業務使用する会社は、アルコールチェックをしなければならなくなると聞きました。上記Bは、出入り毎に必要になるのでしょうか。また、上記CやEはそもそも外出先ですし、どうしたら良いのでしょうか?

  回 答

【直行、直帰の許可と取消】
貴社における直行・直帰は、「本来は会社にて始業し、又は終業しなければならない」という原則に対する例外という位置づけをされていると思われます。そして例外を認めることについて「事前許可」制とし、その基準、目安を「労働時間を大幅に短縮できるかどうか」としているようです。そして、この「許可」を取り消すことが不利益変更にあたるかどうかというご相談だと思います。
結論を先に言えば、原則として不利益変更にはあたりません。直行や直帰は、業務上都合が良いから許可したわけです。それは、労働時間の問題でした。「許可取消」と表現しますが、実態は業務上の指示命令権の範疇ですし、その指示の内容は本来的な運用に近づけるものです。

【実態に即した対応】
一方で、不利益変更にあたらなければ、何をやっても良いというわけではありません。具体的な状況を確認する必要があります。直行又は直帰によって、仮に 2 時間短縮されていたとすれば、対象日について労働時間が 2 時間増えることになるわけです。例えば担当業務の範囲の見直し等、貴社として可能な対応はぜひ検討いただきたいと思います。もともと労働時間短縮の一環として認めた直行・直帰ですから、労働時間短縮については様々な角度からご検討ください。

【道路交通法】
白ナンバー 5 台以上使用する事業所は、安全管理者を選任し、警察署に届け出なければなりません。そして令和 4 年 4 月施行改正道路交通法により、「運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について当該運転者の状態を目視等で確認すること」とされます。さらに 10 月からは「目視等」に加えて「アルコール探知機を用いて確認」が義務づけられます。
同日複数回出入りがある場合は、その都度でなく開始前と終了後の確認で良いようです。直行直帰の際は、携帯型アルコール探知機を携帯させるなどした上で、電話等により運転者の応答の声の調子を確認するなどするものとされているようです。
悩ましいのは、記録することだと思われます。「目視等」、「酒気帯び確認」については、@確認者名、A運転者、B自動車登録番号等、C確認日時、D確認方法、E酒気帯びの有無、F指示事項、等を記録することが義務づけられます。
以上の内容は、インターネット等でも簡単に入手できる情報です。個別事案等は、警察署や道路交通法の専門家にご確認ください。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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