【最初に】
令和4 年10 月より、常時101 人以上の事業所について、社会保険のパートへの適用が拡大されます(常時501 人以上の事業所は適用済み。常時51 人以上の事業所については令和6 年10 月より適用予定)。新たに強制適用となるパートの要件は、次のとおりです。
@ 1 週間の所定労働時間数が20 時間以上30 時間未満
A月額賃金88,000 円以上
B同一事業所に継続2 カ月以上雇用の見込み
C昼間学生ではないこと
まずは、40 名全員が、上記すべての要件を満たすかどうか、ご確認下さい。まずは学生(夜間学生・通信学生を除く)は、適用除外です(C)。月額賃金88,000 円以上とありますが、ここでは通勤手当は含まれません。さらに賞与等も含まれませんし、残業代も含まれないとされています。
【社会保険加入のため】
加入したくないと考える理由は、基本的に次のいずれかだと考えられます。
@社会保険料負担のため、手取りが減るのが絶対にイヤだ。
A少し小遣い稼ぎくらいの感覚だから、扶養から外れてまで働く気はない。
上記Aの人の場合、例外もあると思いますが、基本的に難しいでしょう。逆に上記@の場合は、提示する労働条件によっては、社会保険加入を受け入れる可能性はゼロではないと思います。キーワードは、「手取り」です。社会保険料の自己負担額は、ざっくりですが約15 %です。これくらいの「手取りが減る」という話しなのです。
そこで、所定労働時間数を増やし、手取りが減らない水準まで収入を増やす提案をすることが考えられます。被扶養者範囲内の場合、年収130 万円未満です。140 〜 150万円くらいでは、手取は減ってしまいます。一つの目安として、最低160 万円を意識してください。年間30 万円以上増ですが、月あたり25,000 円以上の水準です。時給900円〜 1000 円の場合で月25 時間〜 28 時間増・週あたり6 〜 7 時間です。
もう一つのキーワードが、加入メリットです。もし病気で休まざるを得なくなった場合に傷病手当金が受給できるようになりますし、一定の障害者になった場合は、障害厚生年金が受給できます。将来の公的年金も加入期間や報酬月額に応じて増えます。
見落とされがちですが、不安な社会にあって大きなメリットだと思います。
【加入しない人の労働条件】
一方で、どうしても加入しないという人については、法律上社会保険適用とならない労働条件になるよう見直す必要があります。
手っ取り早いのは、「月額賃金88,000 円未満」とすることです。時給950 円の場合で、月92 時間以下で設定すれば何とかなります。ただ残念ながら、最低賃金が上昇傾向で数年以内に1000 円まで増額されることが見込まれます。最終的には、所定労働時間数を週20 時間未満にするしかなくなりそうです。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
|