【育児介護休業法】
大雑把ですが、【産前産後休業⇒育児休業⇒育児短時間勤務】を認めることが、法律上の義務ですね。育児短時間勤務も、所定8 時間のところ6 時間勤務を認めるもので、「2 時間休業」を意味します。産前産後休業、育児休業と同様に、休業制度といっていいでしょう。法律上の義務は、「休業を与えること」だけです。これに「給与を保障」する必要はありません。ありませんが、貴社は賞与を半額程度支給し、育児短時間勤務でも給与を満額保障しているとのことです。
法律上義務がないとはいえ、既に制度化してしまった事項については、既得権のようなものが発生します。たとえば、法律上は最低賃金を支払えば合法ですが、これを越える給与を支払っていて、「法律上の義務はないから」といって最低賃金に変更することが難しいことは理解いただけると思います。休業中の給与を全く支給しないことに変更するためには、基本的には従業員の合意が必要となります。
【合意を得られなければ】
合意が得られない可能性が考えられます。この場合、どうすれば良いでしょうか。
推測ですが、変更しても特に影響のない方にとっては、合意する可能性が高いと思われます。合意しないのは、現に利益を得ている者や、今後利益を得られる可能性がある者が中心になると思われます。
仮に全従業員の8 割が合意したとしても、それで一気に変更して良いかというと悩ましいです。個別合意が得られない場合、大多数の合意があったとしても、経過措置や代替措置をとる等、客観的に認められやすい何らかの措置をとっておきたいところだと思います。
【根本的な考え方】
育児に対する理解は必要ですし、「子育てに優しい会社」であることを否定するつもりはありません。しかし、そのことによって、育児と無関係の従業員に過度の負担を求めるものであるならば、明らかに不公平です。近年、少子化の影響もあって、特に育児に関する配慮が当然であるかのような空気があります。しかし、育児に専念せず、仕事を継続することを選択したのが従業員本人であることも忘れてはなりません。
仕事と育児の「両立」を目指すべきであって、育児のため「仕事を犠牲」にするのであれば、それは本末転倒だと考えます。
本来、子育ては個人の都合です。社会背景から、社会全体で支援することは必要ですが、支援を受ける者が権利濫用するようなことが許されて良いと言う話しではありません。育児のための配慮は、他の従業員の協力によって成立していることは、常に念頭に置いておきたい事項です。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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