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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《令和5年1月号》
時間外月60時間超の5割増
  質 問

【質問者】
製造業(正社員100 名、パート等20 名)

【質問内容】
当社は、製造業を営む株式会社です。働き方改革も意識してまして、以前と比較すると、残業はかなり減りました。通常月の残業はほとんどなく、多くても月30 時間以下です。しかし、繁忙期はそれなりに夜遅くまで残業となる状況が続いています。残業時間数は、月70 時間〜 90 時間くらいです。ちなみに繁忙期は、毎年2 月〜 3 月、11月〜 12 月です。
先日、令和5 年4 月から、残業が月60 時間を越えると、中小企業でも残業代が5 割増になると聞きました。5 割増は、負担が大きいです。仕入れ値が高騰していますが、価格転嫁がうまく進んでいない中、これ以上賃金負担が増えることは、正直なところかなりきついです。残業を減らせば良いということはわかりますが、どうしても仕事が繁忙期に集中するため、残業を減らすことでそれ以上に売上・利益が下がってしまいます。
どうしようもないことは分かっていまして、愚痴のようになりましたが、何か方法がないか、もしあれば教えて下さい。

  回 答

【5割増】
時間外60 時間超の「5 割増」は、以前から大企業には適用されてきましたが、中小企業は猶予されていました。しかし、令和5 年4 月1 日から、適用されることになりました。「5 割増」という言葉の響きだけで、すごいインパクトがありますね。
1 時間あたり賃金が1500 円(月給概ね25 万円前後)のケースで考えてみます。基本の2 割5 分増なら1875 円ですが、5 割増だと2250 円です。こうやって比較すると、実際に大きいと言わざるを得ません。
ところで、5 割増の対象になるのは、「月60 時間」を越えた部分だけです。60 時間を越えた瞬間、その60 時間を含めて全体が5 割増になるわけではないのです。実際にどのくらいの感覚なのか、わかりやすく試算したいと思います。月給25 万円・1 時間単価1500 円、時間外月80 時間の設定とします。
<全部2 割5 分増の場合>
1500 円× 1.25 × 80 時間= 15 万円
< 60 時間超が5 割増の場合>
1500 円× 1.25 × 60 時間+ 1500 円× 1.5 × 20 時間= 15 万7500 円
人によって感じ方は異なると思いますが、「2 割5 分⇒ 5 割、2 倍!」というイメージとはほど遠く、そこまで大きな差ではないと感じる方が多いのではないでしょうか。

【代替休暇】
試算の例の場合、差額は7500 円です。これを合法的に支払わない方法が、条件付きで一つだけ認められています。「代替休暇」を付与する方法です。
代替休暇とは、60 時間を越えた時間に対する割増率の差(1.25 と1.5 の差は0.25)に着目し、「休暇」を与えることと引き替えに、2 割5 分増での支払いを認める制度です。但し、条件が厳しいです。
まず、労使協定を締結を要します(監督署への届出義務はありません)。これはいいのですが、実際に代替休暇を取得するかどうかは、本人の判断となります。ここが厳しいところです。代替休暇制度を設けても、事業所の意思のみで取得させることができないのです。その結果、代替休暇を取得する者と取得しない者が混在すると、給与計算を複雑にしてしまいます。
代替休暇は、時間外60 時間超の月から2 カ月以内に取得する必要があります。仮に取得強制できれば、貴社の場合はちょうど繁忙期を過ぎて取得できるため、都合が良いと思われます。ただ、給与計算の煩雑化等をよく考えて検討せざるを得ません。

【身も蓋もない話し】
現行法上、時間外協定締結を条件に、年間6 カ月までなら、最大100 時間未満かつ連続2 カ月以上平均80 時間以下であれば合法です。貴社の残業時間数も、合法です。
それでも、仮に従業員の誰かが精神疾患等に罹患した場合、注意を要します。直近2カ月が繁忙期で、平均80 時間近い労働時間であったとすれば、貴社が損害賠償義務を負う可能性が高いと考えられるわけです。過去の裁判例を見ると、時間外70 時間でも危なく、60 時間ちょっとくらいでも過重労働と認定された例もあります。
そこまでは難しい場合も、「80 時間」は意識していただきたいと思います。繁忙期の2 カ月間平均で80 時間越なら違法とされます。貴社は70 〜 90 時間なので、少し際どいです。ロボット活用、IT 化の他、繁忙期直前の月に繁忙期のためにできる業務がないか等、いろいろな角度からご検討いただきたいと思います。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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