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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《令和5年9月号》
最低賃金上昇を見込んだ給与設計
  質 問

【質問者】
清掃業(正社員 10 名、アルバイト・パート 100 名)

【質問内容】
当社は、清掃業を営む株式会社です。従業員のほとんどがアルバイト・パートで、平均年齢は 60 代と高めです。最長老は 80 代まで在籍しています。
取引先との契約に基づいて、清掃業務を代行しています。当社を毎年悩ませているのが、最低賃金です。アルバイト・パートの多くは最低賃金ギリギリの給与設定なので、最低賃金アップはそのまま人件費増に直撃します。そのような中、今年(令和 5年)最低賃金が 41 円も引き上げられて 941 円になると決まりました。昨年は 30 円、一昨年は 28 円の引き上げで、毎年過去最高額を更新という非常事態です。ちょっと調べたら、10 年前の平成 25 年は、最低賃金はまだ 712 円だったようです。10 年で 3 割以上も上がっています…。毎年の対応ですが、頭が痛いです。
さて、最低賃金には対応せざるを得ません。最近新たな問題として加わってきたのが、採用の問題です。高齢者でも雇用するため、以前は採用に関してはほとんど困っていませんでしたが、状況が変わってきました。これから先の採用問題もふまえ、最低賃金に関してどのようなことを考えるとよいか、教えて下さい。

  回 答

【一般に言われる対応】
最低賃金引き上げへの対応として、一般に良くいわれる代表例を挙げておきたいと思います。
@「価格転嫁」 一般にいわれる代表例ですね。実際に、貴社も少なくとも取引先の一部に対し、毎年交渉されているのではないでしょうか。
A「生産性向上」 これもよくいわれますが、貴社の場合、時間効率を向上させることができるのであれば、検討する価値があるかもしれません。1 日 4 件、各 1 時間、所定労働時間は移動時間を含めて 6 時間のところ、仮に 1 日 4 件、各 45 分で同様の業務遂行できるのであれば、所定労働時間を 5 時間に抑えることが可能です。なか なか机上の計算通りにいくものではありませんが。
B「不採算取引先の解約」 利益確保に貢献していない取引先に限って、理不尽な要求があったり無駄に時間を奪われるようなことがよくあります。良い機会と割り切って、解約することも一つの選択肢です。
C「新分野進出」 新たに収益性の高い事業を加えるものです。一方で、安易に投資して経済的損害を出すケースも多いので、慎重な判断を要します。

【最低賃金の動向】
令和 5 年福岡県最低賃金は 41 円増の 941 円となりました。意外かもしれませんが、九州の他の県は、さらに大幅増でした。佐賀県 47 円増、長崎県・熊本県・大分県 45円増、宮崎県・鹿児島県 44 円増です。全国平均は大台に乗り、1004 円です。岸田内閣が骨太方針として 6 月に示した「1000 円達成」「地域間格差の是正」が現実となってきたようです。
その骨太方針では、最低賃金 1000 円達成後の「次」の目標を検討することも示されました。それが 1500 円なのかいくらなのか明確ではありませんが、毎年最低賃金が大幅に引き上げられる流れは、今後も続くことが既定路線のようです。

【先取り昇給】
仮に、今年 50 円昇給して時給 950 円とするとします。100 人分の年間所定労働時間数が仮に 8 万時間とすると、50 円増が総額 400 万円増です。大きいですね。そして既述の通り、今後も最低賃金は上昇傾向が続きます。仮に来年の最低賃金が 50 円増の 991円になるとすると、来年また 50 円昇給して時給 1000 円、100 人分でまた年間 400 万円増となります。
そこで、今年一気に 100 円上げて時給 1000 円とすることを考えてみます。年間総額800 万円増となりますが、来年は据え置き可能となります。毎年同額を引き上げることと比較すると、1 回だけ 400 万円相当の負担が増える計算となります。
この 400 万円の負担増で狙いたい効果が、採用です。最低賃金ギリギリの額(950円)での求人と、1000 円での求人という相違が生じます。採用において有利な状況となる可能性が考えられるわけです。同時に、もしかしたら少しは退職抑制の効果もあるかもしれません。400 万円増との比較衡量となります。

【高齢者雇用】
貴社の場合、高齢者が多いという特徴があります。既にご活用かと思いますが、60歳以上の従業員をハローワーク紹介で雇用し、他の諸条件を満たすことで、助成金が支給されます(特定雇用開発助成金)。所定労働時間数が週 20 時間以上での採用の場合に限られます。1 年以上雇用することで、週 30 時間以上は計 70 万円、週 20 時間以上 30 時間未満は計 50 万円と、決して侮れない額です。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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