【一般に言われる対応】
最低賃金引き上げへの対応として、一般に良くいわれる代表例を挙げておきたいと思います。
@「価格転嫁」 一般にいわれる代表例ですね。実際に、貴社も少なくとも取引先の一部に対し、毎年交渉されているのではないでしょうか。
A「生産性向上」 これもよくいわれますが、貴社の場合、時間効率を向上させることができるのであれば、検討する価値があるかもしれません。1 日 4 件、各 1 時間、所定労働時間は移動時間を含めて 6 時間のところ、仮に 1 日 4 件、各 45 分で同様の業務遂行できるのであれば、所定労働時間を 5 時間に抑えることが可能です。なか
なか机上の計算通りにいくものではありませんが。
B「不採算取引先の解約」 利益確保に貢献していない取引先に限って、理不尽な要求があったり無駄に時間を奪われるようなことがよくあります。良い機会と割り切って、解約することも一つの選択肢です。
C「新分野進出」 新たに収益性の高い事業を加えるものです。一方で、安易に投資して経済的損害を出すケースも多いので、慎重な判断を要します。
【最低賃金の動向】
令和 5 年福岡県最低賃金は 41 円増の 941 円となりました。意外かもしれませんが、九州の他の県は、さらに大幅増でした。佐賀県 47 円増、長崎県・熊本県・大分県 45円増、宮崎県・鹿児島県 44 円増です。全国平均は大台に乗り、1004 円です。岸田内閣が骨太方針として 6 月に示した「1000 円達成」「地域間格差の是正」が現実となってきたようです。
その骨太方針では、最低賃金 1000 円達成後の「次」の目標を検討することも示されました。それが 1500 円なのかいくらなのか明確ではありませんが、毎年最低賃金が大幅に引き上げられる流れは、今後も続くことが既定路線のようです。
【先取り昇給】
仮に、今年 50 円昇給して時給 950 円とするとします。100 人分の年間所定労働時間数が仮に 8 万時間とすると、50 円増が総額 400 万円増です。大きいですね。そして既述の通り、今後も最低賃金は上昇傾向が続きます。仮に来年の最低賃金が 50 円増の 991円になるとすると、来年また 50 円昇給して時給 1000 円、100 人分でまた年間 400 万円増となります。
そこで、今年一気に 100 円上げて時給 1000 円とすることを考えてみます。年間総額800 万円増となりますが、来年は据え置き可能となります。毎年同額を引き上げることと比較すると、1 回だけ 400 万円相当の負担が増える計算となります。
この 400 万円の負担増で狙いたい効果が、採用です。最低賃金ギリギリの額(950円)での求人と、1000 円での求人という相違が生じます。採用において有利な状況となる可能性が考えられるわけです。同時に、もしかしたら少しは退職抑制の効果もあるかもしれません。400 万円増との比較衡量となります。
【高齢者雇用】
貴社の場合、高齢者が多いという特徴があります。既にご活用かと思いますが、60歳以上の従業員をハローワーク紹介で雇用し、他の諸条件を満たすことで、助成金が支給されます(特定雇用開発助成金)。所定労働時間数が週 20 時間以上での採用の場合に限られます。1 年以上雇用することで、週 30 時間以上は計 70 万円、週 20 時間以上 30 時間未満は計 50 万円と、決して侮れない額です。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
|