【厚労省の公開資料】
報道では、「130 万円を超えても 2 年間被扶養者のまま」のような感じですね。これだけだと、年収がいくらになっても 2 年間は被扶養者として認められるようなイメージを受けてしまいます。しかし、少なくとも「すべて認められる」わけではないようです。厚労省の説明文書によると、次のように説明されています。
【被用者保険の被扶養者の認定に当たっては、認定対象者の年間収入が 130 万円未満であること等が要件とされているが、一時的に収入が増加し、直近の収入に基づく年収の見込みが 130 万円以上となる場合においても、直ちに被扶養者認定を取り消すのではなく、総合的に将来収入の見込みを判断することとしている。】
【被扶養者認定においては、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書等を確認することとしているところ、一時的な収入の増加がある場合には、これらに加えて、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付することで、迅速な認定を可能とする。】
厚労省は、別途リーフレットにて、130 万円未満の見込だったところ、「人手不足による残業により」一時的な収入変動を例として挙げています。キーワードは、「一時的」で、あえて加えれば「人手不足」ということでしょうか。いずれにしても、単純に「130 万円超えてもすべて被扶養者認定」というわけではありません。
【解釈】
今年 10 月から始まったばかりで、現時点(令和 5 年 10 月 17 日)で 130 万円超過による被扶養者認定の事業所証明について実績がありません。従って、現時点では何とも言えないとしか回答しようがありません。ただ、本年 11 月・12 月については、本人が希望するからではなく、貴院として人手不足という実態があって勤務させたということであれば、被扶養者として認定されることはほぼ間違いないのではと考えます。
逆に人手不足でもないのに勤務するのであれば、認定されないパターンです。実際の運用がどうなるか、何とも言えない面もなくはありませんが。
一方で、次年度について本人の依頼によりシフトを増やす場合は、一時的でなく、人手不足が理由だとしても最初から通年ですから、被扶養者として認定されないものと考えられます。
【責任】
仮に被扶養者として認定されなかった場合、貴院が「被扶養者として必ず認定されるから」等と述べて積極的に勤務するよう誘因した等でない限り、貴院の責任にはなり得ないと解します。「扶養の範囲内」での勤務を希望しているのは本人の都合です。
貴院の場合、シフトの決め方も本人の希望が反映されているようですし。
ただ今回の申出や依頼については、「被扶養者として認定されないかもしれませんよ」と伝えておいた方が、後日の争いの予防にはなるでしょう。もっとも、今回の申出・依頼に対しては、本当に人手不足等でない限り、断るのが筋でしょう。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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