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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《令和5年11月号》
2年間は130万円を超えても被扶養者で良いか
  質 問

【質問者】
クリニック(正職員 3 名、パート 5 名)

【質問内容】
当院は、内科クリニックです。パート職員が 5 名在籍しますが、全員いわゆる「扶養の範囲内」を前提として勤務する職員です(全員看護師です。)。そんなわけで、毎年 11 月・12 月になると「130 万円を超えそう」と言って休むパート職員が出てきます。
冬場は患者さんが増える時期なので、正直困ります。困っても、確実に休まれてしまいます…。
医院側で管理すれば良いのでしょうけど、勤務シフト等は師長に任せています。師長に聞くと、どうも後半で病気等をして休んでも 130 万円近く確保したくて、年間の前半で確実に半分以上稼いでおきたいらしいです。そこを何とか配分するのが師長の役割だろうと言いたいところですが、パート職員の機嫌を損ねるとすぐに退職しかねないようで…。特に看護師は余所で簡単に就職できるため、こちらも強く出られない現状もあるようです。
ところで、報道で「130 万円を超えても 2 年間は被扶養者のまま」で良いと聞きました。コロナ禍において、130 万円超過の医療機関特例がありましたが、今回は業種を問わずそのようですね。早速パート職員から、今年は 11 月・12 月も例年以上働いて 130 万円を超えて構わないと申し出がありました。さらに、来年はもっとシフトを増やして欲しいと依頼がありました。扶養の範囲内であることは前提ですが、給与は少しでもたくさん稼ぎたいようです。
さて、このパート職員からの申出や依頼ですが、そのまま OK しても良いでしょうか。万一ですが、扶養の範囲内を超えてしまった場合、当院が責任を負うことになるのでしょうか。

  回 答

【厚労省の公開資料】
報道では、「130 万円を超えても 2 年間被扶養者のまま」のような感じですね。これだけだと、年収がいくらになっても 2 年間は被扶養者として認められるようなイメージを受けてしまいます。しかし、少なくとも「すべて認められる」わけではないようです。厚労省の説明文書によると、次のように説明されています。
【被用者保険の被扶養者の認定に当たっては、認定対象者の年間収入が 130 万円未満であること等が要件とされているが、一時的に収入が増加し、直近の収入に基づく年収の見込みが 130 万円以上となる場合においても、直ちに被扶養者認定を取り消すのではなく、総合的に将来収入の見込みを判断することとしている。】
【被扶養者認定においては、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書等を確認することとしているところ、一時的な収入の増加がある場合には、これらに加えて、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付することで、迅速な認定を可能とする。】
厚労省は、別途リーフレットにて、130 万円未満の見込だったところ、「人手不足による残業により」一時的な収入変動を例として挙げています。キーワードは、「一時的」で、あえて加えれば「人手不足」ということでしょうか。いずれにしても、単純に「130 万円超えてもすべて被扶養者認定」というわけではありません。

【解釈】
今年 10 月から始まったばかりで、現時点(令和 5 年 10 月 17 日)で 130 万円超過による被扶養者認定の事業所証明について実績がありません。従って、現時点では何とも言えないとしか回答しようがありません。ただ、本年 11 月・12 月については、本人が希望するからではなく、貴院として人手不足という実態があって勤務させたということであれば、被扶養者として認定されることはほぼ間違いないのではと考えます。
逆に人手不足でもないのに勤務するのであれば、認定されないパターンです。実際の運用がどうなるか、何とも言えない面もなくはありませんが。
一方で、次年度について本人の依頼によりシフトを増やす場合は、一時的でなく、人手不足が理由だとしても最初から通年ですから、被扶養者として認定されないものと考えられます。

【責任】
仮に被扶養者として認定されなかった場合、貴院が「被扶養者として必ず認定されるから」等と述べて積極的に勤務するよう誘因した等でない限り、貴院の責任にはなり得ないと解します。「扶養の範囲内」での勤務を希望しているのは本人の都合です。
貴院の場合、シフトの決め方も本人の希望が反映されているようですし。
ただ今回の申出や依頼については、「被扶養者として認定されないかもしれませんよ」と伝えておいた方が、後日の争いの予防にはなるでしょう。もっとも、今回の申出・依頼に対しては、本当に人手不足等でない限り、断るのが筋でしょう。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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