【年次有給休暇扱い】
年次有給休暇は、本人が少なくとも事前に日にちを特定して申し出ることが原則的な取得条件です。ただ、突発的に「正当な理由」のため、当日申出(事後申出)となった場合でも、事業所の裁量で認めることが一般的です。「正当な理由」とは、一般には突発的な傷病や交通事故等であることが多いですが、親の危篤の知らせ等も考えられますし、その都度個々に判断することになります。
ここで「無断欠勤」が正当な理由に当たるかといえば、当たるわけがありません。
もっとも、年次有給休暇扱いを認めることが労基法違反等になるわけではありません。
貴社の判断で年次有給休暇扱いとすることができるかと問われれば、できるという回答になってしまいます。
【リスク】
そもそも無断欠勤は、「出勤して労務提供するという雇用契約」に違反する非違行為です。就業規則にも無断欠勤を禁じる規定があるでしょうから、懲戒事由に当たります。そのような非違行為に対して、懲戒処分の検討すらせず年次有給休暇扱いを認めることは、これが今後の「先例」となってしまう大きなリスクがあります。
高校新卒だからと甘やかすのかもしれませんが、仮に他の勤続 5 年とか 10 年の従業員が無断欠勤しても、同じ取扱いをするのでしょうか。そうしないのであれば、公平性の原則に照らして差別的取扱いとなってしまいます。結論として、既に経過した無断欠勤 4 日については、年次有給休暇扱いを認めず、きちんと欠勤控除し、さらに懲戒処分を検討するべきだと考えます。これができないのなら、全従業員に対し、今回限り異なる取扱いをし、今後は原則通り対応すると周知させて下さい。
【今後】
6 日間の年次有給休暇取得申出に対しては、業務上出勤させざるを得ない高度の事由がなければ、法律上認めざるを得ません。人手不足ということですが、慢性的な人手不足であれば、年次有給休暇の時季変更の理由として認められないとされています。ただ今回は、無断欠勤の途中でなされた取得申出という事情があります。申出を拒否して出勤を命じるのではなく、できれば出勤しないかと打診する程度なら、本人に選択の自由があることを前提に許容範囲だと考えます。
その前に、年次有給休暇の取得申出について、貴社の「所定の申出方法」は定められていませんか。もし所定の方法があるなら、その方法で申し出るように伝えることになると思います。
ところで本人は、入社半年で付与された年次有給休暇を一気に全部消化しようとしています。このまま退職を考えている可能性もありそうですね。LINE 返信では、まずは電話か面談を求める必要があると考えます。今後のことを確認しつつ、今回の対応について回答するのが良いでしょう。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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