【労働法の障壁】
「所定時間外」に「自発的」という「学び」は、労働時間に該当しないことが前提ですね。厚労省作成のリーフレットに、「労働時間に該当しない例」として、次のように示されています。
@終業後の夜間に行うため、弁当の提供はしているものの、参加の強制はせず、また、参加しないことについて不利益な取扱いもしない勉強会。
A労働者が、会社の設備を無償で使用することの許可をとった上で、自ら申し出て、一人でまたは先輩社員に依頼し、使用者からの指揮命令を受けることなく勤務時間外に行う訓練。
B会社が外国人講師を呼んで開催している任意参加の英会話講習。なお、英会話は業務とは関連性がない。
ポイントとなる部分に、下線を付けてみました。強制しない、不利益取扱いしない、指揮命令をしない等が労働時間に該当しないポイントです。また、会社が弁当・設備・講習会等を提供している事項につていは、波線としました。会社が積極的な支援や何らかの提供をすることすら、判断基準の一部となる可能性があることが示唆されています。
【自ら学ぶきっかけ】
「自発的な学び」は、他から強制できません。しかし、従業員の自由に任せれば、おそらく平均的な日本人と同様に、自ら学ぼうとはしないでしょう。何らかのきっかけが欲しい、という話しになります。なかなか「良い方法」が難しいです。
一般論で恐縮ですが、資格取得奨励制度や学習費用の補助制度等を設ける例があります。今回の貴社の場合、学ぶこと自体を強制しない以上、自発的に学ぶ従業員への支援の在り方を検討することが現実的でしょうね。
【支援の在り方】
貴社の場合、「学びの内容は自由」ですが、支援の対象範囲はある程度定めておく方が良いでしょう。選択肢が示されることから、「何でも自由」と言われるより取り組みやすくなる可能性も考えられます。
支援の内容は、法規制があるわけでもなく、かなり自由に決めることができます。
しかし、最初から本人が「タダ」で受講できるような支援の場合、一般論ではありますが、学習に身が入らなかったりするものです。あらかじめ支援する場合でも、半額程度までが良いでしょう。全額支援する場合も、まずは本人に一定の負担をさせ、修了後とか何らかの要件達成後とかに、追加支援するような流れが良いと考えます。
資格取得奨励の場合、取得一時金や資格手当で対応する例が多いです。
これらの支援制度で、頻繁に問題になるのが支援直後の退職です。学習スキルや資格は本人専属なので、事業所が費用負担する意味が全くなくなります。一度支給したものを「返せ」というのもなかなか難しいです。この観点だけで言えば、一時金より月々支給する方が妥当だとなります。しかし、毎月の額が目立たないためインパクトが小さくなるデメリットもあって悩ましいです。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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