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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《令和6年3月号》
閏年は残業代単価が下がる?
  質 問

【質問者】
建設業(正社員 15 名)

【質問内容】
当社は、建設業を営む株式会社です。所定労働時間は「1 年単位の変形労働時間制」で、1 日 8 時間労働・休日は年 105 日です。給与は月給制で、〆切・支払日は、末日〆切・翌 15 日支払いです。
今年(令和 6 年)1 月分の給与を支払ったところ、1 人の従業員から「残業代の単価が減っている」と申し出がありました。
当社の給与計算担当者に確認したところ、閏年の関係で年間平均 1 カ月あたり所定労働時間数が増えたためという回答でした。実は意味が良くわからなかったのですが、良くわかっていない私が聞いたとおり従業員に伝えたので、従業員も意味が分からないと。さらに、結果的に残業代単価を一方的に引き下げたことは、不利益変更にあたるから違法だと言ってきました。
そんなわけないと思って再度給与計算担当者に確認しました。すると、確かに残業代単価を下げたことは、時給で言えば給与減額にあたるから、違法かもしれないと言い出したのです。
労働基準監督署に電話してみようかとも思ったのですが、そのまま違法だとか是正勧告だとか言われたらかないません。そこで、この機会にこちらで質問させてください。そもそも、なぜ閏年だと残業代単価が減るのでしょうか。また、残業代単価が減ることは違法なのでしょうか。

  回 答

【残業代単価の計算方法】
残業代単価の計算方法は、労働基準法施行規則第 19 条にしっかりと定められています。月給制の場合、「一年間における一月平均所定労働時間数で除した金額」とされています。「月給額」を「年間平均の 1 カ月あたりの所定労働時間数」で割った額ということですね。これだけです。閏年の場合も同様です。
「年間平均の 1 カ月あたり所定労働時間数」は、単純に「年間総所定労働時間数÷ 12カ月」で計算できます。ということは、年間総所定労働時間数が変われば、残業代単価も変わるということを意味します。
貴社の場合、1 年単位の変形労働時間制で、あらかじめ「年間休日 105 日」と定められています。ということは、平常年は「365 日− 105 日= 260 日」で、所定 260 日労働。1 日 8 時間労働だから「260 日× 8 時間=年 2080 時間」、「2080 時間÷ 12 カ月= 173 時間 20 分」です。年間平均の 1 カ月あたり所定労働時間数は、173 時間 20 分なのです。これが閏年だけ、365 日でなく 366 日で計算することになります。「366 日− 105 日= 261 日」で、平常年より所定労働日が 1 日増えます。その結果、年 2088 時間で、1 カ月あたり所定 174 時間となります。
仮に月給 25 万円で計算してみます。残業代単価は、「25 万円÷ 173 時間 20 分(又は 174 時間)× 1.25」ですね。平常年は 1,803 円、閏年は 1,796 円となります。わずか7 円ではありますが、閏年の単価が低くなりました。

【違法か】
さて、結果的に残業代単価を引き下げたことは、違法かどうか。既述のとおり、残業代単価の計算方法は、法律で定められています。その法律に従って計算した結果として残業代単価が少し下がりました。全く違法ではありませんね。
ちなみに、このようなことは気軽に労働基準監督署に相談して良いと思います。仮に他の件での相談でも、それが違法だとしても、労働基準監督官が相談してきた人に対していきなり是正勧告することは、まず考えられません。どうすれば合法になるか、親切に教えてくれると思います。

【面倒なら】
貴社は正しく残業代計算をされているようです。ただ、給与計算担当者にとって、閏年の存在が少し面倒かもしれません。そして何より、残業代単価について従業員からクレーム的なことを言われるなら、それは間違いなく面倒です。仮にクレーム的なことを言われないとしても、黙って会社に不信感を募らせるような人がいるとすれば、それはそれで面倒です。
法定の計算方法でご理解いただけましたとおり、閏年だから低いのではありません。所定労働日数が 1 日多くなったから、残業代単価が下がったのです。仮に同じ 1 年単位の変形労働時間制でも、年間休日数を 105 日で固定するのではなく、年間所定労働日数を 260 日で固定すれば、平常年・閏年とも残業代単価は同額になります。こうすることで、無用な面倒さから解放されることも、選択肢の一つかもしれませんね。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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