【残業代単価の計算方法】
残業代単価の計算方法は、労働基準法施行規則第 19 条にしっかりと定められています。月給制の場合、「一年間における一月平均所定労働時間数で除した金額」とされています。「月給額」を「年間平均の 1 カ月あたりの所定労働時間数」で割った額ということですね。これだけです。閏年の場合も同様です。
「年間平均の 1 カ月あたり所定労働時間数」は、単純に「年間総所定労働時間数÷ 12カ月」で計算できます。ということは、年間総所定労働時間数が変われば、残業代単価も変わるということを意味します。
貴社の場合、1 年単位の変形労働時間制で、あらかじめ「年間休日 105 日」と定められています。ということは、平常年は「365 日− 105 日= 260 日」で、所定 260 日労働。1 日 8 時間労働だから「260 日× 8 時間=年 2080 時間」、「2080 時間÷ 12 カ月= 173 時間 20 分」です。年間平均の 1 カ月あたり所定労働時間数は、173 時間 20 分なのです。これが閏年だけ、365 日でなく 366 日で計算することになります。「366 日− 105 日= 261 日」で、平常年より所定労働日が 1 日増えます。その結果、年 2088 時間で、1 カ月あたり所定 174 時間となります。
仮に月給 25 万円で計算してみます。残業代単価は、「25 万円÷ 173 時間 20 分(又は 174 時間)× 1.25」ですね。平常年は 1,803 円、閏年は 1,796 円となります。わずか7 円ではありますが、閏年の単価が低くなりました。
【違法か】
さて、結果的に残業代単価を引き下げたことは、違法かどうか。既述のとおり、残業代単価の計算方法は、法律で定められています。その法律に従って計算した結果として残業代単価が少し下がりました。全く違法ではありませんね。
ちなみに、このようなことは気軽に労働基準監督署に相談して良いと思います。仮に他の件での相談でも、それが違法だとしても、労働基準監督官が相談してきた人に対していきなり是正勧告することは、まず考えられません。どうすれば合法になるか、親切に教えてくれると思います。
【面倒なら】
貴社は正しく残業代計算をされているようです。ただ、給与計算担当者にとって、閏年の存在が少し面倒かもしれません。そして何より、残業代単価について従業員からクレーム的なことを言われるなら、それは間違いなく面倒です。仮にクレーム的なことを言われないとしても、黙って会社に不信感を募らせるような人がいるとすれば、それはそれで面倒です。
法定の計算方法でご理解いただけましたとおり、閏年だから低いのではありません。所定労働日数が 1 日多くなったから、残業代単価が下がったのです。仮に同じ 1 年単位の変形労働時間制でも、年間休日数を 105 日で固定するのではなく、年間所定労働日数を 260 日で固定すれば、平常年・閏年とも残業代単価は同額になります。こうすることで、無用な面倒さから解放されることも、選択肢の一つかもしれませんね。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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