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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《令和6年5月号》
休憩時間の与え方
  質 問

【質問者】
飲食業(正社員 2 名、パート・アルバイト 10 名)

【質問内容】
当社は、飲食業を営む株式会社です。正社員は 2 名で、店長と料理長です。その他の従業員は、パート・アルバイトとして勤務してもらっています。
多くの飲食店がそうであるように、当社も人材確保に苦労しています。なんとか採用できても、勤務シフトは本人の希望を優先することにしているため、どうしても人手が不足する日・時間帯等が生じがちです。また、作成した勤務シフトのとおり出勤してくれれば良いのですが、急な欠勤等も少なくないことも悩みの種です。ついでに言えば、せっかく採用しても、短期間で退職、中には 1 〜 2 日で退職してしまうことも珍しくはありません。私は年中、勤務シフト作成・調整と採用活動ばかりしているような気がします。
さて本題です。どうしても人手が不足する時間帯・日について、かなり協力的な数名のパート・アルバイトのお蔭で本当に助かっております。助かっているのですが、休憩時間の問題が生じています。
当日 5 時間勤務予定のアルバイトに、就業時間後の人員不足を理由に 1 〜 2 時間延長してもらうことがあります。実は以前は全く気にしてなかったのですが、勤務時間が 6 時間を超えると 45 分以上休憩時間を与えなければならないことを知ったのです。
しかし、人手が足りないから延長してもらっているわけで、休憩時間を与えることはできません。そこで本人には、その日 6 〜 7 時間勤務終了後に 45 分の休憩を与え、その時間にまかないを食べてもらうことで合意してもらいました。
これを知った他のアルバイトから、まかないを食べる時間は 15 分もあれば十分だから 45 分休憩したということで帰って良いかと聞かれました。確かに休憩時間は自由に利用できるわけですから、そのまま帰って良いことにしました。そうすると、他のパート・アルバイトで 1 日の勤務時間が 6 時間を超える者から、「その日は休憩時間はいらないから、その分の時給が欲しい。」と相談されるようになりました。辞められたら困りますし、これにも応じることにしました。結局、パート・アルバイトは、1 日 6時間を超えても終業後にまかないを食べて、そのまま帰宅するという流れになってしまいました。ただ、そのまま帰ってしまうのですから、休憩時間を与えたことにならないのではないかと心配です。このような運用は、法的に認められるのでしょうか。

  回 答

【条文確認】
最初に休憩時間に関する条文を確認します。
(休憩)
第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
A 略
B 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
休憩時間は「労働時間の途中に与えなければならない」と明確に規定しています。
そのまま帰ってしまう場合、労働時間の途中に与えたことになりませんから、法律上認められないことになります。

【終業後の付与】
では、帰らなければ良いのかという疑問が生じます。終業後、まかないを食べ、45分経過を待って帰れば、確かに店舗で休憩していたと言えるでしょう。しかし、これが「労働時間の途中」という要件を満たしているかというと、明らかにそうではありません。結論として、帰らずに 45 分休憩させても、法律上の休憩時間を確保したことにはならないのです。念のため、始業時刻前に 45 分早めに出勤させて休憩させても、法律上の休憩時間にはなりません。

【労働時間の「途中」】
休憩時間は、「労働時間の途中」で与えなければなりません。繁忙その他いかなる理由があっても、「できません」は許されません。ここで、労働時間の「途中」とはどのタイミングなのかについて考えてみたいと思います。
結論として、明確な規定がありません。少し極端かもしれませんが、いったん休憩に入って、まかないを食べるなどして 45 分経過後から 15 分とか 30 分だけ勤務しても、労働時間の途中といえるでしょう。また、45 分を一括でなく、分割して付与することも考えられます。たとえば 10 分休憩 3 回と、15 分まかない休憩で計 45 分です。店舗実態に合わせて、いろいろと工夫してみてください。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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