【社会保険適用の原則】
社会保険は、法律に基づく保険です。民間の保険は加入するかどうかは基本的に個人と保険会社の契約自由の原則が適用されますが、社会保険は基準を満たせば強制加入です。逆に基準を満たさなければ加入したくても加入できません。
まずは社会保険の適用基準の原則を確認します。
・ 1 週間の所定労働時間数がフルタイム労働者の 3/4 以上
・ かつ、1 カ月の所定労働日数がフルタイム労働者の 3/4 以上
社会保険のうち、健康保険は 75 歳未満、厚生年金は 70 歳未満であることが加入条件となります。
「3/4 以上」というのが、わかりにくさを助長している感があります。ざっくりと「正社員が週 40 時間」と仮定して、「週 30 時間以上で適用」と考えていただければ、だいたい良い感じだと思います。
【適用拡大】
適用拡大の基準は、次のとおりです。
・ 1 週間の所定労働時間数が 20 時間以上
・ かつ、所定賃金が月 8 万 8000 円以上
・ かつ、昼間学生でないこと
上記 3 点を満たしても、2 カ月以内の臨時雇用の場合は適用対象外となります。
適用拡大に関する最も大きな問題は、すべての事業所が対象とされるわけではないことです。まず平成 28 年 10 月に、501 人以上の事業所だけが適用対象となりました。
次に令和 4 年 10 月から 101 人以上の事業所に拡大され、さらに令和 6 年 10 月から 51人以上の事業所まで拡大されることが決まっています。
この人数は、「厚生年金被保険者数」で決まります。ご承知のとおり、現に社会保険未加入のパートはカウントしませんが、役員も厚生年金加入ならカウントします。
また貴社にはいらっしゃいませんが、70 歳〜 74 歳も厚生年金対象外なので健康保険加入であってもカウントしません。
【いつから適用拡大】
最後になりましたが、結論から言えば、貴社は当初の予定どおり令和 6 年 10 月から適用拡大に該当します。今回の新規雇用により一時的に 101 人を満たしますが、もしかしたら誰か退職して 101 人未満になるかもしれません。そのため、新たに 101 人に該当するかどうかは、過去 12 カ月間の実績をみて 6 カ月以上 101 人以上だったかどうかで判断するのです。結果的に貴社の場合、令和 6 年 10 月前に 101 人以上の事業所として適用されないまま令和 6 年 10 月を迎えることになります。令和 6 年 10 月時点では、過去 1 年において 6 カ月以上が 51 人以上でしょうから確実に社会保険適用となります。すべて当初の予定どおりということです。
あれこれとパートさん対応策をご検討いただいていますが、この件のお悩みからはすべて解放されますね。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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