【退職代行サービス】
「退職」という労働契約関係の解消を通知することを代行するのが、退職代行サービスです。弁護士でなければ業として本人の代理行為はできません。弁護士が退職代行サービスを行う例もあるようですが、貴院に届いた退職代行会社が民間事業所であることを前提に考えたいと思います。
まず、ネット検索して「今日でやめまっせ」というふざけた退職代行サービスが在するのか確認します。おそらく簡単にホームページが見つかると思います。存在するようであれば、貴院の職員が退職代行サービスを依頼した可能性が高いということになります。それでも、退職代行会社は本人の意思の代理はできませんから、あくまでも本人の退職意思の「通知」の部分だけを代行したということになります。
【依願退職と辞職】
日頃はあまり意識されていませんが、依願退職と辞職とでは、法律上は本来大きな意味の違いがあります。依願退職は「退職したいので、承認をお願いします」のような願い出です。辞職は「辞めます。以上。」のような一方的通知です。退職代行から届いた通知は、後者に当たります。
退職を認めなければならないのか。届いた封書に、本人が退職代行を依頼したことを示す書面の写しが同封されていませんでしたか。そうであれば、本人が依頼したと信じることに客観的な合理性があると考えてよいでしょう。認めなければならないとまでは言いませんが、認めて良いと考えます。冷静に考えると、退職代行サービスを使用せず「無断欠勤・連絡取れず」の方がはるかに迷惑です。確かに自ら退職申し出すべきだとは思いますが、最低な辞め方より少しマシという発想があって良いと思います。というよりも、そう思わなければ落ち着きませんね・笑
【年次有給休暇、鍵・制服】
年次有給休暇(以下「年休」)は、雇用開始 2 カ月なら法律上ありませんね。貴院が採用と同時に与えたりしない限り、ないものは与える必要ありません。一方で、鍵と制服の返却は必須ですね。これらのことは、退職代行会社に電話して伝えるだけで、ほぼそのとおりになると思われます。少なくとも退職代行会社は本人の意思の代理ができませんから、「本人に伝えます」としか言えません。また、退職代行会社の立場として、とにかく紛争になることを避けたいと考えます。貴院の通知が真っ当なことであれば、退職代行会社はそれを実現させてとにかく揉めないようにと考えて本人にアドバイスすることになります。
ついでに本人の立場も考えてみます。何らかの理由から、直接申出ができませんでした。貴院からの電話や LINE は無視します。でも、退職代行会社からの連絡には応じます。年休がないこと、鍵の返却、制服はクリーニングして返却することについて、退職会社から「これできれいに退職できます」と言われれば、素直に応じるケースがほとんどでしょう。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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